研究実績の概要 |
本研究は近赤外分光法(NIRS)を用いて、運動が脳性麻痺者の脳及び筋代謝にどのような影響を及ぼしているのか、脳と筋の同時測定を試み、健常者と脳性麻痺者の比較検討をした。平成27年度まで対象は健常成人10名(男性6名女性4名,平均年齢23.5歳)脳性麻痺者5名(男性4名女性1名、平均年齢36.0歳)について測定した。測定項目はNIRSを前頭部と大腿部の内側広筋に装着し、膝伸展運動時の脳と筋の同側測定を試みた。測定方法は多機能筋機能測定装置の椅子に着座し、NIRSを前頭部と筋に装着し、安楽姿勢で1分間休息し、1分間の運動課題を実施し、その後3分間安静状態を図り、運動前、運動時、運動後のNIRSを測定した。運動課題として運動負荷課題を設定し、下肢に等速性運動180°、60°、等尺性運動の計3条件を実施した。結果として酸素化ヘモグロビン濃度長(ΔCo・L)において、健常者では運動時において、1.安静時に比べ脳のΔCo・Lは増加し、筋では減少した。2.健常者のNIRSでは運動時では脳のΔCo・Lは増加し.筋では減少するという一定の波形を示した。3.運動強度の高い等速性運動60°の方が180°より増加傾向が少ないことが示された。筋では運動強度が高い等速60°でΔCo・Lは減少傾向が見られた。脳性麻痺者では運動時では1.安静時と比べて脳のΔCo・Lは減少傾向を示し、筋は減少傾向を示した。2.脳性麻痺者ではNIRSの一定の波形の傾向を示さなかったなど健常者と同様の傾向は示さなかった。最近の研究によって、NIRSが姿勢や体動に大きく影響されることが判明し、脳性麻痺者は運動時の姿勢異常が特徴となっているためデータとしての再現性や信頼性が欠ける可能性が示唆された。その為、姿勢によるNIRSを補正する血流動態分離法による再検査が必要と考え、脳性麻痺者7名について再検査した。
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