研究課題/領域番号 |
24500729
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
丸山 剛生 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (90181833)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 加速度計測 / 動作解析 |
研究概要 |
本研究はランニング障害の予防に貢献することを最終目的とし,慣性センサによる計測と無線式の計測システムを構築し,長時間ランニング時の下肢動作と着地衝撃および筋活動量の計測を行い,被験者のランニング動作の特徴やランニングシューズの性能を評価することを目標としている.平成24年度においては,慣性センサによる携帯型計測システムの構築を主目的として次の実験を実施した. 1)各種動作中の加速度センサを用いた着地衝撃計測の妥当性を検証するため,男性被験者7名を対象に,ランニング,着地動作などの6種類の動作を実施させ,足部に装着した3軸加速度センサによる衝撃加速度と床反力計による衝撃力との関係を検討した.その結果,両者の関係には正の相関関係が認められ,加速度センサによる衝撃加速度の計測値から動作中における下肢に加わる衝撃力を推定できることがわかり,加速度センサによる計測方法の妥当性を示した. 2)前述の加速度計測システムを用いて野外でのサッカー競技中について,加速度信号と映像から求めた動作の種類との関係を男性被験者1名を対象に検証した.その結果,動作の種類の違いにより衝撃加速度の大きさが異なることを明らかにし,野外における長時間の運動においても加速度計測システムを用いて着地衝撃が計測可能であることを実証した. 3)スニーカーやハイヒールなど機能が異なる靴を着用した歩行において,下肢の動作,足底圧分布,下肢の筋活動量と靴機能の違いとの関係を検証するため,女性被験者12名を対象として,床反力計を敷設した歩行路においてスニーカータイプの靴3種類とハイヒールタイプの靴4種類を着用した歩行を実施した.その結果,靴の機能により歩幅,歩行速度,足底圧における前足部と後足部の荷重分布割合が大きく影響を受けることが明らかになった.下肢の筋活動においては特徴的な違いを明らかにすることができず,今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究達成度は,次の理由からおおむね順調に進展していると評価される. 1)3軸加速度センサによる着地衝撃計測を構築し,加速度センサによる衝撃加速度の計測値から動作中における下肢に加わる衝撃力を推定できることがわかり,加速度センサによる計測方法の妥当性を示すことができた.また,野外における長時間の運動においても加速度計測システムを用いて着地衝撃が計測可能であることを実証した. 2)インソール型足底圧分布計測システムを導入し,床反力計のない環境における動作中の着地衝撃を計測することが可能になり,歩行実験を行い,その有効性を明らかすることができた. 3)しかしながら,歩行動作中の下肢の筋活動量についてはその処理方法も含め特徴を明らかにすることができず今後の課題となった.また,3軸加速度センサによる着地衝撃計測は加速度センサを足部のみに装着したものであり,膝部や腰部などに加速度センサを装着して足部での衝撃加速度がどのように伝搬するのかを今後明らかにする必要がある.さらに,着地時の衝撃加速度は下肢の着地姿勢に大きく影響されるため,映像を用いた動作解析に頼らない下肢の姿勢計測を検討することが必要である.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度における研究実績を踏まえ,次の実験計画を進める. 1)加速度センサを用いた加速度計測では,センサが小型・軽量なので被験者への負担が少なく,計測そのものは安易に行なえるが,センサの取り付け方や体動による振動の影響と信号の解釈には注意を要する.しかし,複数の加速度センサを装着して足部・膝部・腰部での加速度信号からランニングの着地衝撃の伝達特性を考察できると考えられる. 生体の落下着地動作の着地時について,足部・膝部・腰部の加速度の計測を行ない,着地時の衝撃の下肢における伝達特性を評価する.この時,各セグメントは傾くため,加速度算出の際に解剖学的な軸あるいは絶対座標系の軸との整合性を考慮する必要がある.また,床反力を同時に計測することにより,着地時の衝撃がどのように下肢を伝達していくのか検討することが可能である.さらに逆動力学解析を行い,足関節,膝関節,股関節の関節トルクや筋電位計測による筋活動量と合わせて考察することにより,膝伸展機構の働きと加速度伝達特性の関係,筋活動状態と加速度伝達特性との関係など検討できるものと考えられる. 2)ランニングの着地時について足部・膝部・腰部の加速度計測を行ない,ランニング着地時の衝撃の伝達特性を評価する.また,被験者の下肢アライメント,着地時の足の置き方(踵着地,つま先着地,中足部着地),走能力など個人差を考慮することにより,ランニング障害の発生要因を加速度伝達特性の関係から考察することが可能である. 3)屋外における1~2時間程度のランニングを行い,下肢関節角度計測,足部・膝部・腰部の加速度計測および下肢筋群の筋電位計測を実施し,筋疲労に伴う筋活動状態の低下が下肢の動作制御や着地衝撃緩和効果に及ぼす影響を考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
・未使用額の発生状況 平成24年度において,被験者謝金の未使用分が発生し,5万円程度の残金が生じた. ・平成25年度での未使用含めた研究費の使用計画 1)ランニング中に足部・膝部・腰部における加速度を計測するため,3軸加速度センサを2個追加購入する.10万円×2個=20万円 2)下肢の筋電位計測用にアクティブ型筋電位センサを4個追加購入する.8万円×4個=32万円 3)本研究ではヒトを対象としているため,被験者謝金として20万円程度を予定する.
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