研究課題/領域番号 |
24500729
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
丸山 剛生 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (90181833)
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キーワード | バイオメカニクス / 加速度計測 / 動作解析 |
研究概要 |
本研究はランニング障害の予防に貢献することを最終目的とし,慣性センサによる計測と無線式の計測システムを構築し,長時間ランニング時の下肢動作と着地衝撃および筋活動量の計測を行い,被験者のランニング動作の特徴やランニングシューズの性能を評価することを目標としている.平成25年度においては,慣性センサによる携帯型計測システムの妥当性の検証および着地衝撃が伴う動作中の筋電位計測の信頼性を検証するため次の実験を実施した. 1)ヒトに装着した慣性センサから得られた加速度・角速度のデータを用いて,慣性センサ装着部位の三次元姿勢を推定する方法を検討し,絶対座標系における姿勢の推定法を確立した. 2)ゴルフパッティング動作中のヒトの体幹の回転動作について慣性センサを用いて計測し,モーションキャプチャシステムと慣性センサによる体幹の三次元姿勢および回転動作の推定精度を比較したところ,慣性センサによる測定結果の精度が高いことを示し,慣性センサによる体幹部姿勢の推定方法の妥当性を示した. 3)着地衝撃が伴う動作として,高さ24cmの台から落下した直後にサイドカッティングする動作と毎秒3m程度の速度の助走からサイドカッティングする動作を対象として,大腿直筋と大腿二頭筋の筋電位計測を行い,着地時の衝撃力は床反力計を用いて計測した.着地時の筋活動状態について最大随意収縮時の筋電位を基準として動作中の筋電位を表現することにより,測定部位の違いによる筋電位計測値への影響を除外し評価できることを示し,着地衝撃が伴う動作中の筋電位計測の信頼性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の研究成果としては,慣性センサを用いて加速度と角速度の計測値からセンサ装着部位の姿勢の推定方法を確立し,その妥当性を実証することができたこと,着地動作を伴う動作においても筋電位の計測から筋活動量を推定する方法の信頼性を確認したことが挙げられる. しかし,次の点において平成25年度の研究達成度は,「やや遅れている」と評価される. 1)平成25年度の研究目的であるランニング着地時の足部・膝部・腰部の加速度の計測実験が実施できておらず,着地時の衝撃の下肢における伝達特性を評価することができていない. 2)また,それに伴い屋外における1~2時間程度のランニングを行い,下肢関節角度計測,足部・膝部・腰部の加速度計測および下肢筋群の筋電位計測を実施し,筋疲労に伴う筋活動状態の低下が下肢の動作制御や着地衝撃緩和効果に及ぼす影響を検討する実験も実施できていない. その結果,平成26年度の研究計画を見直す必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究達成度はやや遅れているため,研究申請当時の研究目的を縮小し,かつ研究計画も少し変更する.平成26年度の研究計画は次のように進める. 1)生体の落下着地動作の着地時について,足部・膝部・腰部の加速度の計測を行ない,着地時の衝撃の下肢における伝達特性を評価する.この時,各セグメントは傾くが,平成25年度に確立した方法で解剖学的な軸あるいは絶対座標系の軸との整合性をとるための補正を行う.また,床反力を同時に計測することにより,着地時の衝撃がどのように下肢を伝達していくのか検討することが可能である.さらに逆動力学解析を行い,足関節,膝関節,股関節の関節トルクや筋電位計測による筋活動量と合わせて考察することにより,膝伸展機構の働きと加速度伝達特性の関係,筋活動状態と加速度伝達特性との関係など検討できるものと考えられる. 2)ランニングの着地時について足部・膝部・腰部の加速度計測を行ない,ランニング着地時の衝撃の伝達特性を評価する.同時に下肢筋群の筋電位を計測し,筋の活動状態を考慮しながら検討する. 3)ミッドソール構造の異なる市販のランニングシューズを着用して落下着地動作やランニングを行った際の下肢の動作制御と着地衝撃緩和効果を評価し,スポーツシューズのクッション性について評価を行なう.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度において慣性センサの購入を延期したため,20万円程度の残額が発生し26年度に繰越すことになった ・平成25年度に購入予定であった慣性センサを2個購入する.(10万円×2個=20万円) ・本研究ではヒトを対象としているため,被験者謝金として30万円程度を予定する,また,研究成果を公表するため,学会参加への旅費に充当する.
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