研究課題/領域番号 |
24500730
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
岡田 英孝 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20303018)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 長距離走 / 表面筋電図 / 下肢筋活動 |
研究概要 |
本研究では長時間走行中の走者の下肢動作および下肢筋活動の変化・変動を包括的に分析し,長距離走におけるパフォーマンス向上に役立つ知見を得ることを目的とする. 24年度は研究課題1として,走速度の変化にともなう筋の動員変化の機序に関する研究を行った.被験者は日常的に長距離走トレーニングを行っている鍛錬者(19歳男性)1 名と日常生活で特別に運動を行っていない非鍛錬者(23 歳男性)1 名の計2 名とした.トレッドミルを用いて,非鍛錬者は130m/min,鍛錬者は190m/min を開始速度として,1 ステージごとに20m/min ずつ速度を上げていく間欠的な漸増負荷実験を行った.各ステージ間の休憩を3 分以上おき,330m/minまで行った.ただし,非鍛錬者は330m/min で3 分間走ることができなかったため,走行が可能であった250m/minまでとした.被験者の右脚の大腿直筋(RF),外側広筋(VL),大殿筋(GM),大腿二頭筋長頭(BF),半腱様筋(ST),前脛骨筋(TA),腓腹筋内側頭(GT),ヒラメ筋(SL)の8 筋にディスポーザブル型の表面電極を貼付し,ワイヤレス電極プローブ(FreeEMG,BTS 社製)を装着して,サンプリング周波数2kHzで筋電図を計測した. 1 サイクル中の筋電図平均振幅の変化量を比較すると,鍛錬者はST,TA,GM において走速度の増加にともなう増大量が大きく,非鍛錬者ではRF,GM,BF,ST において増大量が大きかった.このことから,鍛錬者では走速度が増加するにつれて下腿部の筋活動量が増大し,非鍛錬者では主に大腿部の筋活動量が増大することが分かった.以上のように鍛錬者と非鍛錬者では走速度の増大にともなう下肢の筋活動の変化の様相が異なることから,下肢筋の速度変化への対応の違いが長距離走パフォーマンスに影響していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,複数の鍛錬者と非鍛錬者について同様の実験を行い,結果の統計的分析に基づいて群間比較を行う予定であった.しかしながら,実験のセットアップ(特に計測機器間の同期および長時間計測にともなう計測クロックのずれの補正に係る問題の解決)に予定以上の時間を要したため,実験の実施に遅れを生じてしまった.そのため,24年度は上記の実験に関して結果を事例的に比較することしかできなかった. 24年度の成果はパイロットスタディの役割としては十分に果たしているが,全体として計画が遅れていることは否めない.しかし,上記の問題は既に解決しているため,25年度以降,遅れを取り戻すことが十分に可能であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
25年度は以下のように研究を推進していく.1) 24年度にやり残した研究課題1(走速度の変化にともなう筋の動員変化の機序に関する研究)について,被験者数を増やし,結果を再検討する.2) 研究課題2(疲労時のパフォーマンス維持の方略に関する研究)を行う. 研究課題2の具体的な方法は以下の通りである. 1.対象者 研究課題1の鍛錬者群の被験者を対象とする.対象者数を10名程度とする. 2.一定負荷長時間走行テストを用いた実験 トレッドミル上で疲労に至るまでランニングを行わせる.走速度は(1)290m/min,(2)310m/min,(3)330m/minとし,各速度での実験はそれぞれ別の日に行う.ランニング中の下肢および体幹の動作,下肢の筋活動,呼気ガスを研究課題1の実験と同様の方法で取得する. 3.下肢の動作,筋活動量および有気的エネルギー消費の解析 研究課題1と同様の解析を行う.各速度における時間経過にともなう下肢動作,積分筋電図,酸素摂取量の変化をみることにより,疲労がこれらに及ぼす影響について検討する.また,疲労が生じても同じ走速度で走っている局面(各走速度でのランニングの実験終了少し前の局面)に着目し,疲労時にどのようにパフォーマンスを維持しているかを検討することにより,長距離ランナーの疲労時のパフォーマンス維持の方略を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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