本研究では長時間走行中の走者の下肢動作および下肢筋活動の変化を包括的に分析し,長距離走パフォーマンス向上に有用な知見を得ることを目的とした. 最終年度である26年度は研究課題1(走速度の変化にともなう筋の動員変化機序の解明)および研究課題2(疲労時のパフォーマンス維持のために走者が採っている方略の解明)の結果についてまとめた.また,これまで主として下肢筋活動のEMG解析を中心に研究を進めてきたが,これに加えストライド特性および下肢キネマティクスの解析をおこなった.2つの課題それぞれの実験結果より,以下のことが明らかになった. 1) 長距離走者は走速度の増加にともないより短い時間で地面を蹴り,遊脚期距離を増加させることでステップ長およびステップ頻度を増加させ,走速度を維持している 2)走速度の増加にともない下肢の筋活動量が増大するが,特に支持期における大殿筋,大腿二頭筋,半腱様筋,遊脚期における大腿直筋,大殿筋,腓腹筋が走速度の増加に貢献している 3)疲労をともなう長時間走行では,より長い時間をかけて地面を蹴り,より短い時間で脚のリカバリーを行うような動作に変化する 4)疲労をともなう長時間走行では,腰の沈み込みや支持期距離の増加によるブレーキの増大が生じる 5)支持期の腓腹筋およびヒラメ筋の筋活動,遊脚期の大腿直筋,前脛骨筋および腓腹筋の筋活動は長時間走行による疲労の影響を受けやすい 以上のように,本研究の成果として,走速度の変化および長時間走行による疲労が下肢動作および下肢筋活動に及ぼす影響が明らかとなった.
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