これまでの運動・スポーツ参加・継続モデルは横断的なデータ分析に基づく推論に依拠する陥穽をもつ、と1977年度以降の文部科学省「体力・運動能力調査報告書」の運動実施状況へのコーホート的分析などを主たる根拠に指摘している(海老原、2011;海老原ら、2012;海老原、2013)。また、調査時点で運動・スポーツに親しんでいる者のスポーツ・キャリアを振り返る回顧的なデータは、同じ集団の運動・スポーツから離脱した者や当初より運動・スポーツを行っていない者のスポーツ・キャリアを分析対象としていない。本研究はこのような実情を内省し、ターニングポイントとなる進学を挟む4年間、同一対象者への運動・スポーツ参与状況、スポーツ・キャリアを追跡することを目的とする。調査票は、運動・スポーツ実施状況、具体的な運動・スポーツ名称の特定、実施と非実施の理由、習い事の有無に、個人的な属性を加えて構成される。調査対象者は保護者による追跡調査の許諾にともなう追加調査や断続的な追跡調査の実施などの理由で、年度ごとに配布数と回収数に異なる。最終的には、年中443件/6270件=7.1%、小2年175件/1053件=16.6%、小5年157件/1025件=15.3%、中2年149件/990件=15.1%、高2年0件/1335件=0%であった。追跡調査に協力する回答者が運動・スポーツに積極的な児童・生徒となる危惧が高まり、冒頭に記す生き残る者モデルとなる可能性は否定できないが、連続的にしろ断続的にしろ追跡調査における、運動遊びとスポーツの参与ならびに非実施から構成される構造的な変容の実態を明らかにするとともに、参加継続モデルを再考する。
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