研究課題/領域番号 |
24500739
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
門田 浩二 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50557220)
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研究分担者 |
木下 博 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60161535)
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キーワード | 到達運動 / 視覚運動制御 / 姿勢制御 / ゲイン調節 / 潜在的運動制御 |
研究概要 |
本年度は主に視覚運動応答のゲイン変化についての実験検証を行った.まず,本来の目的である到達運動中の視野背景運動を利用する実験に先立ち,その比較対象となるリーチングターゲットの移動が誘発する運動応答のゲイン変化を検討した.被験者は到達運動中に提示されるターゲットの移動の方向に追従して随意的に運動修正を行う課題(追従課題)と,ターゲットの移動方向に拮抗する方向に運動修正を行う課題(拮抗課題)の2種類の課題を遂行し,その際の応答の大きさ(運動腕の加速度の振幅)を比較検討した.追従課題では反射的運動応答はターゲットの追従に貢献するため応答は増大もしくは維持されるほうが課題の遂行に貢献するため振幅は増大するようなゲイン調節がされていることが予想される.これに対して拮抗課題ではターゲット移動方向への応答は課題遂行を妨げることになるため抑制するほうが機能的であるため,振幅は抑制されるはずである.結果はこの仮説をサポートしており,追従課題では拮抗課題と比較して振幅が増大することが明らかとなった.つまり,反射的な視覚運動応答においても,課題の要請に起因する文脈依存の応答ゲインの調節が生ずる.さらにこのゲイン調節の強度には高齢被験者と若年被験者の間の差が認められなかった.この結果は事前準備された運動に含まれる反射ゲインの調節能力が加齢の影響を受けづらいことを示している.つまり,加齢影響を強く受けるとされている判断や意思決定とは独立した処理により,ゲイン調節が行われている可能性を示している.今年度は同様の実験を視野背景運動を付加した条件と比較することで,ターゲット移動と自己運動による修正運動の制御特性を整理し,その処理を担う神経メカニズムの理解を深める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視野背景運動を利用した実験は一時的に中断しているが,その比較対象となるターゲット移動を利用した実験において,派生的ではあるが非常に興味深い結果を得ることができた.この成果は次の研究展開に新たな示唆を与える重要な内容を含んでおり,本研究の進捗を加速させるものである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本来目的である自己運動に由来する運動誤差修正のメカニズムに迫るため,視野背景運動と,ターゲット移動を組み合わせた心理物理実験を行う.これにより動作中の修正運動の制御特性を整理していく.さらに計画に基づき,ゲイン調節の両手間・両眼間転移現象を利用した実験を行い,この感覚運動応答の処理を担う神経メカニズムの理解を深めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額内の主たる項目は物品費と人件費である.物品費はH24年度に購入予定であった眼電位計測装置とアナログ出力装置が当初予定より安価で購入できたことと,予算削減のためにデータ分析・実験系制御用ソフトウエア(Matlab),実験用ワークステーションを他の財源よりねん出したことによる. 人件費は実験補助者,支援者雇用の残額である.これはここまでの実験が比少人数の被験者に留まっていることと,分業・委託が難しい探索的な分析を行っているため,研究代表者自らが作業の多くを担ったことによる. 物品費はデータ分析用ソフトウエア(Matlab)のライセンス更新費用に利用する.また計測に不足している筋電図計測用アクティブ電極を購入する予定である. 人件費はH26年度に予定する実験規模拡大に伴う被験者数の倍増と,膨大なデータ処理を進めるための研究支援者雇用に充てる.
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