変動し続ける実環境下で正確な動作を実現するには,運動する者自身の移動や動揺が引き起こす誤差を修正する必要がある.本研究では到達運動中の視野背景運動が誘発する無意識的な修正動作の特性を整理することで,人間の自己運動に対する修正能力を実現している神経メカニズムの理解を深めることであった. 実験の結果,この修正動作は同一条件下で繰り返し誘発されると抑制されることが明らかとなった.またこの抑制は単に刺激を見ているだけでは生じないことも明らかとなった.つまり,同じ視覚刺激に対しても,単に「見ているだけ」の状態とその情報を利用して動く状態では,その制御の仕方を無意識的に変化させている可能性が示された.
|