本年度は、マスターズスポーツ大会単位分析で得られた大会マネジメントと大会開催効果の情報を質的にカテゴリー化し、特に大会開催効果の相違性の分析に着目した。分析の結果、北欧米諸国やオセアニア諸国では、世界・複数国、国、地域レベルで開催されているマスターズスポーツ大会の開催効果に関する情報が拡大しており、主に開催地にもたらす効果として、出場する中高年者のエンパワーメント、充実感、生きがいづくり等の人生の活力化と活性化、家族、地域、世代等の交流促進、スポーツ・レジャー・観光産業の市場拡大と経済活性化、さらには、生涯スポーツを実践する中高年モデルとしての影響力や教育的意義に関心が注がれ、メディア等での情報発信の兆しが見られる。大会を支援する学術面からの支援も拡大し、これらの効果測定を研究機関と連携し大会の社会文化的・経済的な便益情報の蓄積が見られる。一方わが国では、シニアのエリートスポーツという印象が大会主催側でも高く、学術的支援としてはマスターズスポーツ参加者を対象とした生理学的研究やトレーニング論、参加者の動機や継続要因分析を中心とした心理学的な研究成果は見られるものの、社会学的・文化論的な視点から、マスターズスポーツ大会がどのような効果を生み出し、それらが生涯スポーツや地域スポーツの振興視点の中でどのような可能性をもつのかについて議論された研究知見は非常に乏しい。マスターズスポーツが背高齢者に限らず成人・中高年を対象としたものであること、さらには競技レベルのキャリアに関わらず、誰でも競技を楽しむことのできる運営上の開放性と主催者側の意識改革が今後求められる。
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