研究課題/領域番号 |
24500742
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
井上 邦子 (松田邦子) 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (40278239)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 伝統スポーツの身体観の変容 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績としては、まず9月13日から20日までモンゴル国ウランバートルおよびその周辺において現地調査を行った。その現地調査の主な成果としては以下の二点が挙げられる。 まず一点目は、初年度から予定していた力士のプロ化の動向について調査した点である。具体的には、現役力士であるD氏(56歳)に、幼少期の育ち方やその後の力士への道のりについて個人的な歴史について情報を集め、その後本人がいわゆる「プロ」化していく過程について聞き取り調査を行った。結果、力士の現在の運営組織について、所得など経済的な側面などが明らかになった。また、モンゴル相撲の世界にも、グローバル社会における情報化の影響が現れていることも分かった。 二点目は公立学校、私立学校、大学など教育機関を対象とし、おもに保健体育の授業においてどのように身体を育成しようとしているのかを、調査したことである。その際には、教員に直接インタビューを行うとともに、実際の授業を参与観察し、また日本での指導要領にあたる資料なども入手し、モンゴル国内において身体教育が、現在どのように行われているかの実態を調査した。そのことは、本研究の主たる目的である「土地所有法がもたらす身体観の変容」が教育場面にどのように影響しているのかを把握するために必要な調査であると考えられる。具体的には、いずれもウランバートル市内の「84番学校(公立小中高一貫学校)」、「新モンゴル学校(私立の小中高一貫校)」、「アブラガ大学(相撲専攻もある体育大学)」において行った。さらにモンゴル国では、学校だけではなく放課後にスポーツのクラブ活動が盛んにおこなわれている。そうした体育教育を担う指導者は海外からの派遣できている指導者も多く存在する。その中で、日本のJAICAから派遣されている指導者4名にも、モンゴルにおける児童生徒たちへの身体教育について情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も昨年度同様、現地調査を行うことができ、予定していたインフォマント、現地協力者ともスムーズにコンタクトを取ることができた。またその結果を、2冊の書籍と、1本の論文にまとめ、公に公開することができた(編著『スポーツ学の射程――「身体」のリアリティへ』(黎明書房)、共著『保健体育を教える人のために』(東山書房)、拙著論文「モンゴルにおけるスポーツ文化のグローバリゼーション―〈世界〉に参入する手法としての「スポーツ」(神戸市外国語大学 外国学研究91))。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、7月9日から15日まで現地調査を予定している。そこでは、モンゴル伝統スポーツの祭典「ナーダム」の開催時期であり、その競技会を参与観察することを直近の計画としている。その際には、力士へのインタビューも予定しており、最近のルール改正や組織委員会の変化などを中心に聞き取り調査を行うことを考えている。 また、次年度は科研費における最終年度となる。よって、これまでの研究成果をまとめ、これまで以上に公に研究結果を提示していく必要があると考えている。そこで、とくに『スポーツ史研究』など中央学会誌への原著論文の投稿を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張が公務の関係で、1回のみでしかも短期間しか実施することができなかったため、旅費の支出が抑えられたと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究のまとめの段階であるので、本格的に資料を整理し、研究のまとめを行いたいと考えている。そのためにデータ入力の人件費や資料整理にともなう機材等の支出も予定している。また、本年度は、現地調査を2回(7月および2月を予定)行いたいと考えている。その際に、旅費の支出を必要とすると考える。
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