研究課題/領域番号 |
24500744
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
斉藤 篤司 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (90195975)
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研究分担者 |
橋本 公雄 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (90106047)
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キーワード | 自己選択強度 / ランニング / 生理的応答 / 心理的応答 |
研究概要 |
本研究は運動の継続化をもたらす生理・心理的要因として、計画的行動理論における統制感の関わりを検討するため、運動強度の自己選択を焦点にあて、自己選択された運動強度での運動時、運動者は運動をどのようにコントロールしているかを検証することがゴールである。したがって、本研究の最も重要となるのは、可能な限り、運動者が自己選択強度でのランニングをシミュレーションできるかである。そのために実験者の関与も可能な限り小さい状態で運動を行わせることができるようシステムを作成を試みてきた。運動時の速度および心拍数の変化という生理的応答と気分、感情という心理的変化を全て同期させて測定するものである。今年度の予算で2台のトレッドミル上で並走している運動者の運動強度や気分・感情を測定するための機器までは構築できたが、これを機能させるシステム(ソフト)がうまく稼働できないまま終わってしまった。したがって、運動自体は自己選択強度でのランニングは実施でき、運動前後の気分や感情の測定は従来通りできているが、主な目的であった『自己選択強度での運動中、運動者は気分や感情を大きく変動させないよう運動強度を変動させる』という仮説が検証できなかった。 しかし、自己選択強度の運動の応用として、低山の登山を用いた長時間運動に関し、『自己選択ペースでの登山』のみを条件に自由に歩いてもらい、その際の心拍数や主観的運動強度の変化を測定した。その結果、起伏のある条件下での歩行のため同様に比較することは難しいが、同条件で歩いている被験者間の比較では、心拍数のばらつきが大きい、つまり、運動強度を変化させて歩いている被験者の方が、バラツキの小さい、つまり運動強度を一定に保とうとしている被験者より、低い主観的強度を示している傾向が認められ、本研究の仮説を裏付ける可能性が期待できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己選択強度ランニングの心理的応答を評価するためのシステムの完成が喫緊の課題といえる。現在用いているシステムが3尺度、14項目を運動中、一定間隔(現在は10分間)で表示し、計測するように作成されているが、昨年度からの懸案である、項目数を削減とシステムの簡略化が実現できておらず、システムが機能していないのが最大の原因である。現在も本システムなしでの自己選択強度でのランニング実験は継続して行われているが、心拍数の測定と走速度および気分・感情との同期ができていない。この問題に関しては現在、システム制作側と、平成26年度前半には実験可能となるよう調整中である。 現時点での達成度は自己選択強度でのランニング時の運動強度と験者による口頭での気分・感情の測定結果と、外乱因子としての音楽の影響についての結果をまとめているところであり、平成26年度中の投稿を予定している。ただし、これらはシステムを用いていないという点で、再検討の余地を残している。また、自己選択強度の運動に関し、これまでの研究結果を含め、平成26年度内に書籍として出版することが予定されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度にはシステムの完成と本研究の最大の特徴でもある、2台のシステムを同期し、2人の被験者の同時測定を行うことが不可欠となる。2人がそれぞれ自己選択強度で、並走することによる生理的心理的応答と1人が自己選択強度で走行し、他の1人が並走する他者のペースで走行した際の生理的心理的応答を検討するもので、他者ペースの運動が自己選択ペースでの運動とどのように異なるのかは、運動の統制感との関わりを検証する上で、必須と考える。そのためにもシステムの作成を早急に行う必要がある。 現在、従来行われてきた様々な環境条件下での運動時の生理的、心理的応答に対する研究が、客観的・相対的運動強度を用いた研究から、自己選択強度という主観的運動強度を用いた研究に移行してきているため、本課題の検証が急がれる。
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