研究概要 |
本研究では、身体活動や運動実践へと誘う「恩恵」に注目し、ウォーキング行動の促進に効果的な「恩恵チャネル」を探索することを目的としている。 平成24年度には、ウォーキングの恩恵(メリット)認知尺度を開発し、各尺度スコアとウォーキング時間との関連を検証した。40~64歳の日本人(n=3000)を対象にしたインターネット調査による横断研究を実施し、ウォーキングに関連する恩恵要素(8因子40項目)について回答を得た。それらについて探索的・確認的因子分析を行い, 尺度の妥当性、信頼性を検証したところ、7因子構造(21項目)で, 許容できる適合度指標の値を得た(GFI=0.942, AGFI=0.921, RMSEA=0.06). また, 内的整合性を示す, Cronbachのα係数も, 許容の範囲内であった(α=0.80~0.88). 尺度スコアとウォーキング時間(身体活動の推奨基準に従い週150分以上・未満の2群に分類)との関連性を検証した結果, ウォーキング時間が週150分以上の群の方が, 尺度スコアも高くなることが確認された. さらに、再検査法においても, 尺度全体において強い相関が認められた(r=0.74, p<0.01).このことは、本研究で開発した恩恵認知尺度の信頼性・妥当性を示すものと言える。 本研究で開発された恩恵認知尺度を活用することによって、健康という恩恵を動機づけとした促進戦略には反応しない人々をウォーキング行動へと誘う効果的な方策に関する示唆が得られることが期待されるとともに、ウォーキング以外の身体活動・運動への適用可能性の検討が期待される.
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