研究実績の概要 |
本研究では、身体活動や運動実践へと誘う「恩恵」に注目し、ウォーキング行動の促進に効果的な「恩恵チャネル」を探索することを目的としている。 まず、ウォーキングの恩恵(メリット)認知尺度を開発した。40~64歳の日本人(n=3000)を対象にしてウォーキングに関連する恩恵要素についてインターネット調査を実施し、探索的・確認的因子分析を行って尺度の妥当性、信頼性を検証したところ、7因子構造(21項目)で、許容できる適合度指標(GFI=0.942、AGFI=0.921、RMSEA=0.06)ならびに内的整合性指標(α=0.80~0.88)を得た。また、ウォーキング時間が週150分以上の群の方が、尺度スコアも高くなることが確認された。さらに、再検査法においても、尺度全体において強い相関が認められ、本研究で開発した恩恵認知尺度の信頼性・妥当性が示された。 次に、「身体活動促進が健康だけでなく、環境保全にも役立つ」(身体活動のトロント憲章)との観点から、Eco-Friendly Attitude(EFA)と総身体活動量(IPAQ;150分以上/週)との関連についてロジスティック回帰分析によって検証した。その結果、EFAは5項目で偏りがみられたが、最終的に4項目で信頼性、妥当性が確認できた。ロジスティック回帰分析の結果、総身体活動量(150分以上/週)と有意に関連していたのは、EFA高群(OR=1.43, 95%CI=1.15-1.78, p=0.001)であり、EFAと身体活動が関連していたことが明らかとなった。 本研究で開発された恩恵認知尺度を活用することによって、健康という恩恵を動機づけとした促進戦略には反応しない人々をウォーキング行動へと誘う効果的な方策に関する示唆が得られることが期待されるとともに、ウォーキング以外の身体活動・運動への適用可能性の検討が期待される。
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