研究課題/領域番号 |
24500764
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
広瀬 統一 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (00408634)
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研究分担者 |
中村 千秋 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (30180376)
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キーワード | 方向転換能力 / アジリティ / 女子サッカー / 日本 |
研究概要 |
初年度の横断的検討の結果、競技レベルの高い女子サッカー選手は優れた方向転換能力(COD)を持つこと、CODは高校生年代に顕著に変化すること、若年者(12~16歳)と成人(17歳~成人)では、CODと相関を持つ体力要素が異なることが明らかとなった。そのため、25年度は女子サッカー選手のCODのA:縦断的な変化分析、B:説明因子としてのテクニックの影響分析、C:トレーニングプログラムの検討、の3点を目的として研究を行った。 A:女子サッカー選手のCODの縦断的変化:45名の中・高生女子サッカー選手の身長、体重、10m×5COD、10m/40m走、バウンディング、スクワットジャンプ、カウンタームーブメントジャンプの年間変化量を検討した。その結果、CODは13歳から17歳までの各年代で有意(p<0.05)に発達する一方、13-16歳、17-18歳のCODとその他の測定項目の年間変化量には有意な相関が見られなかった。これらのことはCODのトレーナビリティが中学生から高校生前期に高いこと、またCODは他の体力要素とは独立して発達することを示唆する。 B:女子サッカー選手のCODスピードとテクニックの関係:18名の中・高・大学生女子サッカー選手の10m×5CODテスト中の停止期および減速期の膝屈曲角度および重心位置を年代間で比較検討した。その結果、減速期の重心位置は大学生が高校生よりも有意に低かった。一方、停止期の重心位置に群間差が見られないことから、優れたCODを有する選手は、減速期に重心位置を低くし、そのまま重心変位が少ない状態で方向転換をしていることが示された。 C:トレーニングプログラムの検討: 上述の結果から、COD向上プログラムとして、減速から停止局面での重心変移量軽減のためのコアトレーニング、トリプルフレクションのトレーニングを構築し、介入することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに女子サッカー選手の方向転換能力の横断的、縦断的変化を明らかにした。また、横断的検討においては、方向転換能力向上に対してスピードやパワーの貢献度が大きいことが推察されたが、縦断的検討ではそれぞれの年間変化量間で相関が認められず、方向転換能力は独立して発達することが推察された点は特筆すべきである。一方、方向転換能力に関わる技術因子として、減速期から停止期の重心変移量が低いことが、速度の向上に貢献する可能性が示された。現在データは取得済であるため、解析を進めている。これらの現状を鑑みると、仮説と反する結果が得られてはいるが、研究進行は概ね予定通りである。 ただし、当初は3ヶ月ごとに測定し、変化を追うことを計画していた。しかしながら、本研究の測定対象である体力要素の多くが体調にも影響さえるためか、短期間の変化に個人内の変動が大きいことが明らかとなった。そのため、当初の計画を変更し、1年ごとの変化を検討することとした。この点は大きな変更であるため、当初の計画を上回る成果が得られていないと判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果をもとに、トレーニングプログラムを立案した。主にコアトレーニングとトリプルフレクションを獲得するためのプログラムであり、これらは減速から停止期の重心位置の安定性を目的とする者である。これらトレーニングを定期的に行うことで見られる方向転換能力の変化を観察、分析する。 また、大きな計画変更点として、測定インターバルの変更がある。当初は3ヶ月ごとに測定し、変化を追うことを計画していた。しかしながら、本研究の測定対象である体力要素の多くが体調にも影響さえるためか、短期間の変化に個人内の変動が大きいことが明らかとなった。そのため、当初の計画を変更し、1年ごとの変化を検討することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、当初予定していた国際学会発表のスケジュールが確保できずに渡航費などを大幅に使用しなかったこと、また測定回数の減少に伴い、国内移動費が減少したためである。 次年度では国際学会での発表機会を増やすこと、また、データ解析に長時間を要するため、データ解析補助員の雇用費に充てる予定である。
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