研究課題/領域番号 |
24500780
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岩竹 淳 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10342487)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 伸長-短縮サイクル運動 / バウンディング / プライオメトリックス / ばね能力 / 短距離走 |
研究概要 |
プライオメトリックトレーニング種目のひとつであるバウンディングは,その遂行能力を評価した立五段跳の跳躍距離が短距離走の疾走速度と高い相関関係を示すことが知られている.跳躍距離でジャンプ力を評価する立五段跳であるが,運動開始直後は前傾姿勢で脚の屈曲伸展動作を伴うプレス型ジャンプであるのに対して,後半は直立姿勢で脚の振り込み動作を伴うスイング型ジャンプになるため,二種類の異なるジャンプ力が内在すると考えられる. 本研究では,立五段跳におけるプレス型とスイング型のジャンプ比率を分析することで,疾走能力の優劣により立五段跳のパフォーマンス構造がどのように異なるのかを明らかにし,疾走能力を改善するプライオメトリックトレーニングの内容を検討する手がかりにしたいと考えた.そこで,最初に立五段跳における二種類のジャンプの境界を明らかにするため,高等専門学校に所属する男子学生19名(年齢16.9±1.0歳,身長170.8±4.9cm,体重57.8±6.1kg)を対象に体育館フロアにおいて立位姿勢から立五段跳を行わせ,1,2,3および4歩目の接地時における大転子と頭頂が地面と成す角について分析した. その結果,1歩目(73.9±9.0 deg)と2歩目(73.0±9.1 deg)との間,3歩目(83.9±6.6 deg)と4歩目(84.4±5.7 deg)との間に有意な差は認められなかったが,3歩目および4歩目は1歩目および2歩目に対して有意に高い値を示した(p<0.001).これらのことから,立五段跳における3歩目までの跳躍距離は前傾姿勢によるジャンプに依存し,3歩目以降の跳躍距離は直立姿勢によるジャンプに依存していることが推察された.結論として,立五段跳に内在する二種類のジャンプ力を分類するには,3歩目を境界にすることが適当と考えられ,次年度以降の研究へ応用するものとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,立五段跳におけるプレス局面とスイング局面の境界を明らかにすることを目的として研究を遂行した. 当初の予定では,被験者として高等専門学校に在籍する男子学生30名を対象にすることを考えていたが,実際には19名となり計画段階より少なくなった. その理由として,実験予定日において十分なジャンプを実施できる健康状態にある者が10名程足りなかったことを挙げられる. また,立五段跳におけるプレス局面とスイング局面の境界分析を進める上では,体育館に敷いたウレタンシート(NISHI社, スーパーX ※設備備品費)上で,立五段跳の運動開始から終了までをデジタルカメラ(CASIO社, ハイスピードカメラEXILIM FH25 ※消耗品費)でパンニング撮影し,動作解析システム(DKH社, フレームディアスIV ※現有)を用いる計画であったが,このことは達成できた. 一方で,動作解析対象については,接地時の下肢三関節の角度変位および身体重心の水平移動速度の分析を予定していたが,分析に必要な時間と人手の確保が難しく,一項目のみの分析に終わった.しかし,研究の目的については,おおむね達成できたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,平成25年度は疾走能力と立五段跳におけるプレス・スイング比との関係について検討すること予定している.具体的には,高等専門学校における男子学生を対象にスタンディングスタートからの50m全力疾走を行わせ,5m毎の通過記録を光電管(NISHI社, ジェスタープロシステム ※現有)で計測する.疾走距離を疾走時間で除することにより疾走速度を求め,疾走能力の評価指標とする. さらに,立五段跳におけるプレス型とスイング型のジャンプ力の比率を明らかにするため,立五段跳の3歩目付近に1cm間隔で赤外線の発光部と受光部が組み込まれているランニングデータ収集システム(MICRO GATE社オプトジャンプNEXTシステム ※設備備品費)を設置し,運動開始位置からの跳躍距離を測定する.プレス局面およびスイング局面の跳躍距離から,総跳躍距離に対する各局面の比率を算出し,ジャンプ力転移能力の評価を試みるとともに,疾走能力との関連性について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画としては,主に立五段跳の3歩目付近に設置する,1cm間隔で赤外線の発光部と受光部が組み込まれているランニングデータ収集システム(MICRO GATE社オプトジャンプNEXTシステム ※設備備品費)の購入や,学会においてこれまでの研究成果を発表するとともに,研究最終年度に向けて研究協力者と打合せを重ねることを予定している.
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