研究実績の概要 |
【平成27年度】ランニング中に5種類の温度(10,15,20,25℃,常温)の水を頭部にかける実験(実験②)を実施した。その結果,常温の水では鼓膜温の上昇を抑制できなかったが,それ以外の水温(以下冷水)ではいずれも鼓膜温の上昇を抑制できることが確認された。抑制効果が見られた冷水4条件間では効果の大小は認められず,水かけに最適な水温を確定することはできなかったが,選手の感想では20℃が最も好評で以下,15℃,25℃と続き,10℃は冷た過ぎるという感想であった。また,平成25年に実施した実験①の研究成果「暑熱環境下の長距離走における帽子着用の有無が鼓膜温に及ぼす影響」を日本トレーニング科学会(11月)で発表し,論文を作成中である。期間中の公表には間に合わなかったが,実験②についても,順次,学会発表と論文作成を進めていく予定である。 【期間全体を通しての成果】本研究の目的は,暑熱環境での運動時において熱中症などの事故やパフォーマンス低下を防ぐため,過度な体温上昇を抑制し,体温をコントロールする方法を検討するものである。本研究では2つの実験を通し,以下のような成果を得た。 1.炎天下の20分程度のランニングにおいては,帽子を着用しても鼓膜温の上昇を防ぐことが出来ず,着帽によって逆に選手は暑さをより強く感じている。 2.炎天下の20分程度のランニングにおいて,冷水を頭にかければ,鼓膜温の上昇を防ぐことができる。しかし,常温の水をかけても鼓膜温上昇の抑制効果はない。 これらの結果から,ランニング中(計20分程度のインターバル走)の体温をコントロールするためには,帽子の着用は効果がみられず,冷水を頭部にかけることが重要であることが分かった。また選手の感覚としては,無帽の方が頭部に強制対流が当たることで,より快適に感じていることが分かった。
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