動脈血CO2分圧が肺換気へ刺激するときの循環遅れ時間を次の負荷時に検討した。10秒間で200ワットのインパルス負荷の後の回復期に、25ワットと50ワットの各負荷を与えた。回復期の負荷強度を変えた理由は次のとうりである。肺で決定される動脈血CO2分圧が、頸動脈体まで、移動し、その後、頸動脈体を刺激して肺換気を変動させるが、負荷が高いと肺から頸動脈体までの循環時間が短くなるので、この刺激が早くなる。この点を本研究では検討した。動脈血CO2分圧は、終末呼気CO2分圧と1回換気量から推定した。動脈血CO2分圧はインパルス負荷後、一旦、低下した後に増加して、25ワット回復負荷時には19秒後に、50ワット回復負荷時には23秒後に、ピークを向かえた。肺換気はインパルス負荷後にいったん低下した後に増加した。心拍数は、50ワット回復負荷時の方が25ワット時よりも有意に高かった。このことは、肺から頸動脈体への循環時間が50ワット時の方が早いことを示唆している。肺換気と動脈血CO2分圧の間で、相互相関を取った。その結果、最も高い相関は、遅れ時間が7秒の時(25ワット回復負荷時)に、得られた。また、50ワット回復負荷時では6秒後と31秒後にピークが見られた。これらの結果は、動脈血CO2分圧の頸動脈体を通して、肺換気へ影響するフードバックループがあることを示唆するとともに、このフードバックの遅れ時間が肺から頸動脈体までの循環輸送時間の遅れに関連することを示唆している。
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