研究課題/領域番号 |
24500787
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
花井 淑晃 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50360730)
|
キーワード | 骨格筋 / IGF-1 / IGF-1受容体 / GH / GH受容体 |
研究概要 |
GH-IGF-1軸の骨格筋の運動適応に対する貢献については、その顕著な蛋白同化作用や、血中動態について着目した多くの研究がある一方で、筋組織における受容体の発現調節と筋活動との関連性については明らかでない。GHは脂肪分解、IGF-1は糖利用と、顕著な代謝調節能を持つことから、運動時の筋の代謝的応答が、両ホルモンの受容体発現を介して調節されている可能性が考えられるが、筋の収縮活動と両ホルモンの受容体発現について着目した研究は見られない。 本研究は、筋のGH受容体、およびIGF-1受容体の発現が筋の収縮活動によって調節され、運動時の代謝応答に貢献している可能性について検討を行うものである。 初年度は収縮特性や、安静時の動員など、様々な生理学的特性の異なる骨格筋間で、IGF-1受容体の発現を比較し、また急性運動の影響について調べた。今年度は、IGF-1受容体の翻訳を負に調節するmiR-1およびmiR-133aの発現と、成長ホルモン受容体の発現調節について検討を行った。結果、miR-1については骨格筋間で発現量に有意な差は見られなかったが、miR-133aについては、一部、骨格筋間で発現量が有意に異なり、筋間で異なるなんらかの因子によって異なる調節をうけている可能性が示唆された。しかしながら、mRNA量とタンパク量のそれぞれの発現量からみた考えうるIGF-1受容体の翻訳への抑制効果については、一貫した傾向は見られなかった。GH受容体mRNAの発現は以前の我々の研究と同様な傾向であり、いくつかの筋間で発現レベルが異なる傾向が認められた。しかしながら、GH受容体蛋白については、Western blotによる検出を試みたが、シグナルの同定に至らず、今後、検出の条件、手法等についてさらなる検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの本課題の研究に関する進行状況については、おおむね予定通り順調に進展しているものと考える。 研究の対象となる、IGF-1受容体およびGH受容体の発現解析について、mRNAの分析についてはqRT-PCR法、蛋白についてはWestern Blot法による半定量的分析方法を確立しており、いくつかのモデルを用いて興味深い知見が得られている。GH受容体の蛋白発現についてのみ、Western Blotによる分析について、より、検出感度、精度の高い検出方法を確立する必要があり、来年度の課題となっている。 これまで、安静時のラット下肢骨格筋におけるIGF-1受容体、およびGH受容体の発現について、ラット下肢の様々な骨格筋間で比較し、いくつかの骨格筋間、あるいは骨格筋内の部位により、これら遺伝子発現が異なることが明らかとなった。骨格筋は安静時においても動員レベルや血流量等、あるいは収縮特性等、様々な異なる特性を持ち、まだ、同一筋内でも、部位によって、筋線維組成が大きくことなる場合がある。いくつかの骨格筋間で遺伝子発現レベルに有意な差が見られたことから、これら種々の因子の何が両受容体発現の直接の調節因子となっているのかについて、今後、明らかにしていきたい。IGF-1受容体については、トレッドミルを用いた急性運動(20m/min, 60min)では分析を行ったいずれの筋においても有意な変化が認められなかったことから、筋の収縮活動自体は調節因子とはならないと考えられる。今後、一定期間のトレーニングの影響を検討し、また、その他、IGF-1受容体発現を調節する因子について検討を加えて行きたい。GH受容体の発現についても同様の比較を行い、両者の発現調節に対して、特に、収縮活動、トレーニングの影響について明らかにする予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度はトレーニング適応モデルを用いた実験を主として実施する予定である。 ラットを用いて、動物用トレッドミルを用いた有酸素的な(20-30m/min, 1hour)強度でのランニングトレーニングを10週間実施し、コントロール群と比較することにより、有酸素的運動適応後の骨格筋において、IGF-1受容体およびGH受容体の発現レベルが調節されるのか否かについて明らかにする。各骨格筋において、発現量の有意な変化が認められた場合には、IGF-1受容体の翻訳を抑制するmir-1、miR-133aや、さらに、その他、IGF-1受容体、およびGH受容体遺伝子発現を調節する因子のトレーニングよる変化について検討を行う。 さらに、筋肥大時のIGF-1受容体、GH受容体の発現レベルの変化についても検討を行う予定である。ラットを対象として、腓腹筋の腱切除を片足に処置し、ヒラメ筋、および足底筋に対して代償的に過負荷を与えることにより、筋肥大を誘発する(代償性肥大モデル)。処置側のヒラメ筋、足底筋と対照脚の筋とを比較することで、IGF-1受容体、およびGH受容体の発現レベルに対する、筋肥大の効果について、検討を行う。 GH受容体タンパクについては、安定した発現定量方法を確立する必要がある。
|
次年度の研究費の使用計画 |
試薬用経費が少額残ったため 平成26年度の研究費のしよう計画については、主として、1.実験用ラットの購入、2.蛋白、RNA分析試薬の購入、3.学会発表および論文投稿の三点である。 ラットについては、トレッドミルランニングトレーニングモデル(6 x 3 =18匹)、筋肥大モデル(6 x 4 =24匹)の合計42匹で約12万円。蛋白分析試薬(抗体等)30万円、RNA分析試薬に30万円、学会発表の旅費が8万円、論文投稿費用が10万円の予定である。
|