研究課題/領域番号 |
24500788
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
和田 正信 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (80220961)
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研究分担者 |
松永 智 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (70221588)
矢中 規之 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70346526)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋疲労 / カルシウム感受性 / スキンドファイバー / グルタチオニレイション |
研究概要 |
平成24年度は,短時間運動における低頻度疲労のメカニズムについて,筋原線維のカルシウム感受性に焦点をあて検討した.ラットの坐骨神経に電極を取り付け,片脚 (実験群) に70 Hz,1回0.35秒の刺激を3秒に1回与え,下腿三頭筋の収縮を誘起した(疲労収縮).なお,反対脚はコントロール群として用いた.電気刺激は,張力が初期値の50%に低下するまで継続し,その時間は平均5.12分であった.収縮終了30分後に20 Hzおよび100 Hzの電気刺激で収縮を負荷し,張力を測定した.その後,摘出した腓腹筋から,メカニカルスキンドファイバーを作製し,筋原線維のカルシウム感受性を測定した.また,全筋のホモジネイトから,ウエスタンブロット法を用いて,トロポニンIに含まれる還元型グルタチオン (GSH) の量を測定した. 疲労収縮後における100 Hzの張力に対する20 Hzの張力の比は,コントロール群と比較して有意に低下した.一方,筋原線維のカルシウム感受性には,変化がみられなかった.2,2’-dithiodipyridineおよびGSHを含む溶液に浸漬した後では,カルシウム感受性は,コントロール群では増加したが,実験群では変化がみられなかった.また,トロポニンIに含まれるGSHは,コントロール群と比べ,実験群で高値が観察された. これらの結果は,本実験で用いたプロトコールでは,筋原線維のカルシウム感受性の低下が低頻度疲労が生じる要因ではないことを示すものである.また,実験群では,グルタチオニレイションと感受性を低下させる変化が同時に起こり,両者による変化が平衡状態にあるため,カルシウム感受性が変化しないことが示唆された.本研究の結果は,in vitroの実験から示唆されてきた現象(筋原線維のカルシウム感受性の低下)が,生体内では生じないことを示す新たな知見である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は,長時間運動に関する実験を行う予定であったが,予備実験の結果に基づき,電気刺激の方法が確立されている短時間運動について検討した.すなわち,当初平成25年度に行うはずであった内容を今年度に,平成24年度に行う予定のものを平成25年度に行うことになった.予定していた分析は,問題なく行うことが可能となった.しかしながら,予備実験に時間を要したため,疲労刺激終了後30分後のデータしか取れておらず,それ以外の時間帯のデータ取集は,平成25年度に持ち越すことになった.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年6月までに,平成24年度から持ち越した実験を終了させ,7月から長時間運動についての検討を始める予定である.平成24年度に,「低頻度疲労が起こった筋線維では,グルタチオニレイションが生じる」という予想外ではあるが斬新な結果が得られた.平成25年度は,この現象が収縮終了後,どの程度継続するのかについても着目し,検討を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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