研究課題/領域番号 |
24500789
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
杉浦 崇夫 山口大学, 教育学部, 教授 (80136150)
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キーワード | 筋損傷 / 筋再生 / アイシング / 温熱刺激 / 筋成長因子 / ミオシン重鎖分子種 / 筋衛星細胞 / 膠原線維 |
研究概要 |
本研究の目的は、筋損傷後の処置として現在広く行われているアイシングに対し温熱負荷や体温よりもわずかに低い温度での処置が筋損傷後の再生を最も促進するかについて明らかにすることである。 平成25年度は、8週齢のWistar系雄ラット164 匹を用い、ブピバカイン (BPVC) により損傷のみを施した損傷群、損傷後20 分間のアイシング処置を行なうIce群、損傷後32℃の水浴を行なう32℃群、損傷後42℃の温浴を行なう42 ℃群、そして対照群に群分けし検討した。32℃群と42℃群には損傷後1日おきに、1回30分間の各刺激を14 日後まで最大7 回の処置を行なった。そして、損傷3日後、7日後、15 日後、28 日後にヒラメ筋を摘出し検討した。 筋損傷後の体重、筋重量、相対筋重量には異なる温度刺激の影響は認められなかった。損傷後、MyogeninおよびMyoDは損傷後3日で、Follistatinは損傷後1週間までで高く、その後は時間の経過に伴い低い値であったのに対し、Myostatinは損傷後1週間までは低く、その後は回復に伴い高い値であった。しかしこのような変化に対し、損傷後の異なる温度刺激による反応の違いは認められなかった。同様にIL-6発現量、TGF-β発現量は損傷3日後にピークを示し、その後損傷7日後以降ではそれよりも低い値を示したが、各処置群の間には有意差は認められなかった。 これに対し、回復4週では損傷群を除く全ての処置群で胎児型ミオシン重鎖(MHC)は検出されず、42℃群においては新生児型MHCとMHCIIbは検出されなかった。また、アイシングは筋衛星細胞の増殖や分化を遅延させたり、アイシングと冷却ストレスは膠原線維面積を増加させるのに対し、熱ストレスは膠原線維面積の増加を抑制する傾向にあった。 以上のことより、単回のアイシング、または複数回の冷温刺激および温熱刺激は、筋損傷からの量的な回復には影響を与えないが、質的変化は温熱刺激により促進する可能性のあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の本研究の目的は、筋損傷後の処置としてアイシングや温熱刺激に加え、体温よりもわずかに低い温度(32℃)で発現しアポトーシス誘導因子を阻害したり筋サイズの調整に関与していると考えられているCold inducible RNA-binding protein 3 (RBM3)を加え、筋損傷後の回復を最も促進する処置温度条件について明らかにすることであった。しかしながら、損傷後の32℃での刺激では回復効果は認められず、損傷後の処置として適さないと考えられた。 これに対し、今年度の実績として筋損傷後の処置として温熱刺激は量的な回復には影響を与えないものの、これまで報告されているアイシングでは増加する膠原線維面積を抑制することが確認された。これに加え、筋損傷後の温熱刺激はミオシン重鎖分子種の正常な分布への回復を早める可能性があることが推察され、新たな知見を得たものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
25年度に得られた結果をもとに、現在一般的に行われている受傷3日後までのアイシングとその後の温熱療法が有効か否かを検討するために、筋損傷後アイシングをせず一日おきに2週間まで温熱処置を施す群、アイシングのみの群とを比較検討することにより、どの方法が筋再生に最も有効かについて、生化学的、免疫・組織化学的に比較検討する。 実験動物には、8週齢のWistar系雄ラットを用い、体重が等しくなるように対照群、アイシング群、温熱刺激群、アイシング+温熱刺激群にグループ分けする。対照群を除く各群には両脚のヒラメ筋にブピバカインを筋注し筋損傷を誘発する。対照群には同量の生理食塩水を筋注する。筋注直後に、アイシング群には15分間のアイスパックによるアイシングを連続3日間、温熱刺激群は損傷後1日後から42℃で30分間1日おきに2週間まで、また、アイシング+温熱刺激群には損傷後連続3日間のアイシング後1日おきに2週間まで42℃で30分間の温熱処置を実施する。損傷後、3日、7日、15日、28日後に両脚からヒラメ筋を摘出し、筋重量を測定した後、直ちに液体窒素で凍結し、分析に供するまで-80℃で凍結保存する。 生化学的分析:筋サンプルをバッファーでホモジネートし、遠心分離の後、上清より可溶性タンパク質量を沈殿からは筋原線維タンパク質を抽出しタンパク質量を定量する。また、上清をSDS-PAGEによる電気泳動によってタンパク質を分離した後、ウェスタンブロッティング法により筋再生に関わる筋成長促進因子(TGF-β、Myo-D、Myogenin、フォリスタチン)や抑制因子(ミオスタチン)、ミオシン重鎖分子種を検出する。 免疫組織化学的分析:筋サンプルから厚さ10μmの凍結切片を作成し、ED1染色によりマクロファージを、Pax7染色、Desmin染色、DAPI染色より筋核、筋衛星細胞、筋線維横断面積、ミオシン重鎖抗体による筋線維タイプについて免疫組織化学的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた購入試薬の見積よりも、安価に購入出来た結果による。 消費税増税に伴う、購入予定試薬の不足の補填。
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