研究課題/領域番号 |
24500793
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
和気 秀文 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50274957)
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研究分担者 |
向阪 彰 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (00458051)
グホ サビン 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (30453179)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生理学 / 運動 / 血圧 / 循環調節中枢 / ヒスタミン |
研究概要 |
我々はこれまでに、運動時の中枢性循環調節の一機序として、孤束核におけるヒスタミン受容体H1が関与している可能性を報告した。ヒスタミン神経系は視床下部結節乳頭核を中心に脳全体に投射されていることが知られているので、本研究では、運動時の循環調節の機序を調べる一助として、視床下部結節乳頭核-孤束核系の役割について調べた。麻酔下ラットの腹側結節乳頭核をマイクロ同心円電極で刺激したところ、動脈圧、心拍数ならびに腓腹筋血流量の増加が認められた。尚、組織学的手法により刺激部位が腹側結節乳頭核であることを確かめた。次に孤束核にヒスタミン受容体H1アゴニストを微量投与したところ同様に、昇圧、頻脈、および筋血流量の増加を認めた。しかし、結節乳頭核電気刺激前にH1受容体アンタゴニストであるcetirizine dihydrochloride(1nmol/50nl)を孤束核に投与しても電気刺激依存性循環応答はほとんど減弱しなかった。また、血圧測定用のテレメトリーを用いて、腹側結節乳頭核破壊が覚醒ラットの動脈圧に及ぼす影響について観察したところ、特にラットが活動している暗期に動脈圧が低値を示す傾向にあった。以上より、運動などの身体活動時の循環調節にはには腹側結節乳頭核のヒスタミン作動性神経系が関与している可能性が考えられるが、腹側結節乳頭核-孤束核系の関与は低い可能性が示唆された。また、免疫組織学的手法により腹側結節乳頭核のみならず、その近傍や背側結節乳頭核にも非常に豊富なヒスタミン作動性神経細胞が存在していることがわかった。すなわち、ヒスタミン作動性神経系を介した背側結節乳頭核-孤束核系なども運動時の循環調節に関与している可能性が新たに考えられ、今後この点についてさらに検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究実施計画」に記載した実験をほぼ全て遂行することが出来た。結節乳頭核刺激と延髄孤束核への薬物微量注入実験は、予想していたよりも困難であり、必要以上に実験時間を要したこと、一部予想と異なる結果が出たことなどから、派生的な実験(テレメトリー実験や背側結節乳頭核の電気刺激実験など)を行う必要もあった。従って当初予定していた延髄腹外側野などへの薬物微量注入実験は十分に行うことが出来なかった。しかし、全体としては当初予定していた研究を概ね全て行っており、また、新たな研究仮説を立てるに至るなど、十分な研究成果を得ることが出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も引き続き平成24年度の研究を継続する。特に麻酔下ラットを用いた生理機能実験においては、背側結節乳頭核電気刺激の循環動態に及ぼす影響、そして、H1受容体アンタゴニストであるcetirizine dihydrochlorideを孤束核に投与してた際の電気刺激依存性循環応答に及ぼす影響を観察し、ヒスタミン作動性神経による背側結節乳頭核-孤束核系の役割について調べる。さらに、当初の予定通り、運動時循環調節に関わるヒスタミン作動性神経系の役割について、覚醒ラットを用いて調べる。テレメトリーシステムを用い、腹側結節乳頭核、あるいは背側結節乳頭核破壊が24時間循環パラメーターに及ぼす影響と、自発性走運動時の循環調節に及ぼす影響について調べる。また、自律神経系機能の解析もテレメトリーより得られた血圧シグナルより解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね計画通りに研究費が使用されたが、一部予想に反する研究成果が出たことなどもあり、次年度使用額が僅かに生じた。次年度は生理機能実験のための消耗品代や、学会発表のための参加費として使用する。
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