加齢に伴う骨格筋の萎縮(サルコペニア)は「筋線維の萎縮」と「筋線維数の減少」の2つにより説明される。本研究課題では「筋線維数の減少」が長期間の運動の継続により抑制されるとの仮説のもとに実験を試みた。また、この時の運動の効果に脱アセチル化酵素SIRT1が関与している可能性について検討した。 3ヶ齢ICR系雄性マウスを24ヶ月齢まで回転車輪付きケージで飼育して輪まわし運動を継続させたところ、足底筋の加齢に伴う筋重量および筋線維数の減少は有意に抑制されたが、ヒラメ筋では筋線維数の加齢変化や運動の効果は観察されなかった。また、筋力測定を行ったところやはり運動を行うことにより加齢に伴う筋力低下は抑制されていた。この飼育期間中の生存曲線は運動群と対照群で差は認められなかった。このことから、若齢期からずっと適切な運動を継続していれば、筋機能に加えて速筋では筋線維数の減少を抑制できることが明らかとなった。また、3ヶ齢マウスの片脚の腓腹筋の腱切除による機能的過負荷を施し24ヶ月齢時に確認したが、実験脚のみならず対照脚でもかばう動作を行ったためか筋肥大が生じていたため、実験モデルとして不適切であると推察された。今後、より適切な筋肥大モデルを検討する必要がある。SIRT1の関与を確認するため、24ヶ月齢時までSIRT1活性化剤であるレスベラトロールを餌混投与して飼育したところ、ロータロッドによる運動学習能力の加齢変化は抑制することができたが、筋力低下や筋萎縮は抑制できなかった。よって、運動の継続によるサルコペニア抑制のメカニズムにおいてSIRT1は無関係であることが示唆された。
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