研究課題/領域番号 |
24500797
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
酒井 健介 城西国際大学, 薬学部, 准教授 (70406784)
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キーワード | マグネシウム / 運動 / アシドーシス / TRPM7 |
研究概要 |
運動負荷によるMg要求性の増大に代謝性アシドーシスの関与が考えられる。先に塩化アンモニウム投与による代謝性アシドーシスモデルでは、Mgの吸収率の上昇が確認されたものの尿量の増加に伴った。そこでよりもマイルドなモデルの構築を試みた。チアミンはピルビン酸デヒドロゲナーゼの補因子であり、その欠乏により乳酸蓄積に伴う代謝性アシドーシスが惹起することが報告されている。そこで食餌由来のチアミンの摂取量の差異がアシドーシスを惹起するのか、またMg代謝に影響を及ぼすのかについて検討した。飼料中にチアミン塩酸塩として7.5 ppm含む通常食(ND)に加え、37.5 ppm含む過剰食(RD)とチアミンを含まない欠乏食(DD)の3種の飼料をラットに2週間給餌し、骨格筋および血清中のチアミン濃度の分析を行った。チアミンの測定はKimura et al (1982)の方法に基づき分析条件を最適化し、溶媒を0.2 M NaH2PO4/MeOH (95/5)で流速0.6 mL/minとし、検出試薬を0.01% K3Fe(CN)6を含む15% NaOH溶液とした。検出条件はEx/Em=375 nm/450 nmとした。その結果、血中チアミン濃度は食餌性チアミンに依存(DD; 26.3 ng/mL、ND; 39.4 ng/mL、RD; 68.4 ng/mL)であったが、骨格筋中のチアミン濃度はNDのみで低値を示し(114.5 ng/mL)、ND、RDでは有意な差は確認されなかった(ND; 231.1 ng/mL、RD; 210.1 ng/mL)。同条件下のラットに急性的強制遊泳を施し、安静時のラットとの血液ガス分析の比較を行った。その結果、pH、pO2、pCO2、乳酸濃度では大きな差異は確認されなかった。チアミン欠乏の影響を顕著にするためには、高強度の負荷モデルを構築する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
代謝性アシドーシスモデル(塩化アンモニウム投与、チアミン欠乏)と運動負荷の影響について、Mgの消化管吸収、骨格筋でのメカニズム(TRPM7、MagT1)、腎排泄についてmRNAおよびタンパク質レベルでの解析を終了する予定が、チアミン欠乏モデルの構築にも至らなかった。本年度は申請期間の最終年度ということもあり、大学業務の軽減を調整し、多くの時間を本研究に費やすことを計画する。
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今後の研究の推進方策 |
さまざまな運動負荷モデルや代謝性アシドーシスモデルによるTRPM7以外の輸送タンパク(MagT1やNa/Mgアンチポーター、Claudin16、TRPM6)の発現を消化管、骨格筋、腎で評価するメカニズムの解析を優先的に行う。運動負荷によるMg吸収の増大が、消化管と骨格筋、腎臓の3部位における関係性を明らかにする。心などこれ以外の臓器の関与も考えられるが、焦点を明確にして研究を遂行する。続いて血液ガスへの影響を確認していきたい。Mg摂取や運動負荷が高血圧をはじめとする循環器疾患の予防に貢献することから疾患モデル動物を用いた評価を計画していたが、上記の研究進捗に併せてこの分野での研究の遂行は緩やかに計画する。 大学学部内での委員会業務の負担軽減を調節し、過去の研究推進の遅れを取り戻すための環境を積極的に作っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
運動モデルとしてこれまで強制遊泳モデルを採用してきた。しかしながら動物実験において群内のバラツキが確認されておる。安定した運動負荷ストレスを供するために、適切な運動負荷機器の購入を検討する。当初、早期の購入計画を立てたが研究実施の遅れとともに購入が遅れている。また成果報告(論文作成)についても、同様であり次年度これら費用に充当する。 運動モデルの構築のための実験機器の購入を計画する。併せて試料中の遊離Mg濃度測定機器の購入を計画するが、小型で汎用的なプローブが未だ選定できない状況にある。血液ガス測定と同時に計測可能な汎用機器の購入を計画する。また成果の報告としての論文作成費用にも充当することを計画する。
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