研究課題
肥満や運動トレーニングによる白色脂肪組織(以下、脂肪組織)の再構成(リモデリング)には、脂肪細胞とそれを取り巻くコラーゲンなどの細胞外マトリックス(ECM)が重要な役割を果たしていると考えられるが、未だに不明な点が多い。本研究は、この運動トレーニングや肥満による脂肪組織のリモデリングのメカニズムを、脂肪組織での機能が不明なECM関連分子・デルマトポンチンに着目して明らかにすることを目的に検討を行った。平成24および25年度の検討から、脂肪組織のデルマトポンチンや他のECM関連分子である組織性メタロプロテアーゼ阻害因子1(TIMP1)の遺伝子発現が肥満マウスでは増加し、運動トレーニングはそれを減弱させることが明らかになった。さらに、デルマトポンチンはトランスフォーミング増殖因子(TGF)-βの生理活性を増加させることが肺上皮細胞で報告されていること、TGF-βは脂肪細胞においてプラスミノーゲン活性化抑制因子1(PAI-1)の遺伝子発現を増加させることから、脂肪細胞におけるTGF-βのPAI-1遺伝子発現増加作用に対するデルマトポンチンの強調作用について検討を行った。しかしながら、デルマトポンチンによる影響は観察されなかった。一方、TIMP1は脂肪細胞においてインスリンによるグルコース取り込みを減弱させることが明らかになった。最終年度は上記の脂肪細胞に対するTIMP1のインスリンシグナル減弱作用のメカニズムとそれに対するデルマトポンチンの影響について検討を行った。その結果、TIMP1は脂肪細胞においてTGF-βによって発現が誘導され、インスリンシグナル伝達の重要な中間因子であるAktのリン酸化を減弱させることが明らかになった。このTGF-βによるTIMP1の発現増加にデルマトポンチンによる影響は観察されなかった。これらの結果から、運動トレーニングのECM分子発現増加減弱作用は、脂肪細胞のインスリン抵抗性の減弱に関与していることが示唆された。
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The Scientific World Journal
巻: 2014 ページ: 685854
10.1155/2014/685854