研究課題
これまでの研究で競技者の基礎代謝量に対する除脂肪量(FFM)の寄与率は45.0~70.6%であることを明らかにしてきた。FFMは代謝率が異なる臓器や組織によって構成されているため、本研究ではFFMよりも臓器や組織の重量を用いた方が基礎代謝量に対する高い寄与率が得られるのかどうかについて検討した。基礎代謝量はダグラスバッグ法を用いて測定した。FFM,体脂肪量(FM), 脂肪組織量(AT),骨量(BM),骨格筋量(SM),残余組織量(RM)はDXA法を用い、肝臓,腎臓及び脳の重量はMRI法、心臓重量は超音波法を用いて測定した。基礎代謝量との間に最も強い相関関係が認められたのはFFM(r=0.897,p<0.001)であり、次いでSM(r=0.875,p<0.001)であった。重回帰分析(ステップワイズ法)の結果、2成分モデルの身体組成区分ではFFMのみが選択され、その寄与率は80.4%であった。一方、臓器・組織レベルの身体組成区分ではSMのみが選択され(寄与率76.6%)、競技者の基礎代謝量に対するFFMの影響は、臓器・組織重量の影響に比べて大きいことが明らかとなった。遺伝子多型の影響については明らかにすることはできなかった。また、競技者ではトレーニング環境のひとつである気温の影響によって褐色脂肪組織(BAT)の活性が異なり、その違いが基礎代謝量の個人差に影響を及ぼしている可能性が考えられる。そこで、BATの影響について寒冷誘導産生(CIT)を指標として検討した。しかし、CITと基礎代謝量との間に関連は認められなかった。そこで、寒冷暴露後のCITが高値あるいは低値を示した12名を抜粋し、FDG/PET-CT法により評価したところ、対象者全員からBATが検出されたが、BAT活性値と基礎代謝量との関連は認められなかった。以上より、競技者の基礎代謝量個人差に最も影響を及ぼす要因はFFMであることが示唆された。
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