研究課題/領域番号 |
24500804
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
緒方 知徳 広島修道大学, 人間環境学部, 准教授 (30434343)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋萎縮 / 絶食 / 筋活動 / mTOR |
研究概要 |
絶食時の筋萎縮に関する報告では,遅筋(遅筋線維が多くを占める)に比べ速筋(速筋線維が多くを占める)で萎縮の程度が顕著であることが示されている。しかしながら、絶食時に優先的に進行する速筋萎縮を軽減する方法についての情報はない。本年度は、筋タイプで異なる絶食時の筋萎縮を説明する要因として,遅筋と速筋の収縮活動および機械的負荷頻度の違いに焦点を当て,ラットの片脚足底筋への代償性過負荷によって収縮活動が増加した筋への絶食の影響をタンパク質分解経路および合成経路の変化から明らかにすることであった。 実験には、Fischer系の雄ラット(3ヶ月齢)を用い、代償性過負荷は片脚の下肢足底筋の共働筋であるヒラメ筋と腓腹筋を切除することにより行った(対照脚は切開のみ)。10日間の回復期間をおいて48時間の絶食(水は自由摂取)を行い,両脚の足底筋を摘出し比較分析した。 2日間の絶食に伴う足底筋の萎縮の程度を比較すると、コントロール脚では絶食により9%の筋重量の低下が認められたのに対して、代償性過負荷脚への絶食の影響は3%の筋重量の低下であった。タンパク質合成経路に関する検討として、mTORの発現レベルの検討を行った。mTORのリン酸化レベルは代償性過負荷に伴い増加が認められた。この増加は、絶食を加えた場合でも代償性過負荷が実施されている場合は同様な増加が確認された。このような結果は、筋への機械的負荷もしくは収縮頻度の増加が絶食による筋萎縮の程度を軽減でき、これがタンパク質合成の維持に関連する可能性を示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
速筋線維が多くを占めるラット足底筋を用いて、絶食に伴う筋萎縮メカニズムの解明と萎縮を軽減する方法を探ることが本研究の目的である。本年度は足底筋の共働筋切除による代償性過負荷を用いて、足底筋への機械的負荷および収縮活動頻度を増加させた場合、絶食による筋萎縮の程度が変化するかどうかを明らかにした。 その結果、代償性過負荷を行った場合、絶食による筋萎縮のレベルが低下することが示された。この要因として、mTORのようなタンパク質合成経路に関わるタンパク質の活性化が絶食時にも維持されたことが関連するであろうことも明らかにすることができた。しかし、タンパク質の分解経路としてオートファジーやユビキチンプロテアソーム経路をターゲットとして検討したが、比較に値する発現量の検出に至らなかったため、今後抗体や実験手法を見直し、検討を再度行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
絶食時の筋収縮活動レベルと萎縮の関連性をさらに明らかにするために、次年度は片脚の除神経によって神経活動および収縮活動頻度を減少させたモデルを用いて,遅筋であるヒラメ筋と速筋である足底筋が不活動時の絶食に対してどのように応答するかを明らかにする。 Fischer系の雄ラット(3ヶ月齢)を用い、除神経はラット下肢片脚の坐骨神経の一部摘出することによって行う。切開部の傷の回復が確認されたのち48時間の絶食(水は自由摂取)を行い、ヒラメ筋および足底筋を摘出する。分析項目は、本年度と同様にタンパク質合成経路およびタンパク質分解経路に関連したシグナルの発現変化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者の研究には、化学発光を検出する高感度冷却CCDカメラシステムを必要としており、これを備品として購入することを計画し、本年度研究費を次年度に一部繰り越すこととした。次年度の研究では、化学発光を利用したタンパク質の発現量を所属機関で分析できることとなり、より効率的に実験を進められることが期待される。
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