絶食時に生じる速筋優位な筋萎縮の要因を明らかにするために、機械的負荷の軽減モデルとしてラット下肢片脚へのギプス固定を実施することによって、絶食と機械的負荷の関連性を検討した。 実験には8週齢のFischer系雄ラット(16匹)を用いた。ラットをランダムに絶食群と非絶食群(各8匹)に分配し、すべてのラットの右脚を石膏用いて脚伸展状態で固定した。その後、絶食群のラットは48時間の絶食(水は自由摂取)を行った。絶食終了後、すべてのラットは麻酔下で両脚のヒラメ筋および足底筋を摘出された。 48時間の絶食に伴うヒラメ筋の萎縮の程度を比較すると、ギプス固定を行っていないコントロール脚では3.5%の筋重量の減少であったのに対して、ギブス固定脚では9.9%の筋重量の減少が認められた。一方で、足底筋の筋重量は、コントロール脚で8.4%の減少、ギプス脚で10.2%の減少が絶食によってもたらされた。この結果は、日常的な機械的負荷頻度の高いヒラメ筋における機械的負荷の減少は、絶食時の筋萎縮の進行を促進させる可能性を示唆している。また、タンパク質合成経路に関わるmTORのリン酸化レベルがギプス固定を行った絶食脚で減少しており、絶食に関連して起こる筋萎縮の要因の一因を担っていることが示唆される。
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