研究課題/領域番号 |
24500805
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
中野 裕史 中村学園大学, 教育学部, 准教授 (60301678)
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キーワード | 運動 / 空間記憶 / 記憶消去 / モリス水迷路 |
研究概要 |
記憶は記銘,保持,想起の3つの過程を経て,想起に伴う再固定化または消去の過程に至る.走運動が記憶に及ぼす影響を検討した先行研究の多くは,記憶獲得前の走運動が記憶の獲得過程に及ぼす影響を検討したものであり,記憶獲得後の走運動が記憶の消去過程に及ぼす影響は明らかにされていない.本研究では,乳仔期に甲状腺ホルモンを阻害して記憶過程を破綻させたラットを用いて,記憶獲得後の走運動がBDNF及びその受容体発現の増加と神経新生とともに,記憶の消去を惹起するかどうかを検証することを目的とする. 本年度は,正常ラットにおいて,運動実施のタイミングが嫌悪刺激を使用するモリス水迷路課題の空間記憶に影響するかどうかを検討した. Wistar系雄性ラットをモリス水迷路課題を実施する群(Con),モリス水迷路課題の直前に走運動を実施する群(Pre),モリス水迷路課題の直後に走運動を実施する群(Post)の3つに分類した.モリス水迷路課題は1日当たり4試行,5日間行った.各試行は4ヵ所のランドマークのいずれかよりスタートし,プラットフォーム上に静止した場合を成功試技とした.試行時間は60秒間とした.走運動はトレッドミルを用いて15m/分の速度で1日当たり60分間,5日間行った.6日目にはプラットフォームを取り除いてプローブテストを60秒間実施した. 3群ともに逃避潜時と遊泳距離が短縮するが,Pre群とPost群の逃避潜時と遊泳距離はCon群よりも有意に延長していた.プローブテストでは,プラットフォームが存在した4分円内の滞在時間がCon群で最も長く,Con群とPre群では有意差が認められた.逆側の4分円内の滞在時間はCon群が他の2群よりも有意に短かった.以上のことから,課題直前,直後の運動実施は嫌悪刺激による空間記憶の過程に影響すると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行動解析が終了し,現在,摘出組織の生化学的解析中である.
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今後の研究の推進方策 |
甲状腺ホルモンを阻害して記憶過程を破綻させたラットにおいて,迷路課題を実施し,摘出組織の生化学的,組織化学的分析を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は,組織学的解析を実施しなかったため,それにかかわる試薬等の物品費の購入に残額があった. 次年度,迷路課題の解析と組織化学的解析にかかわる備品や試薬等を購入予定である.
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