研究実績の概要 |
老齢期の筋力低下の要因として,脊髄運動神経細胞体(MNsoma)やその支配筋線維の形態変化が関与することが多く報告されている.本研究では老齢期の運動が筋線維、脊髄運動神経細胞体,神経筋接合部形態にいかなる影響を及ぼすか明らかにした.【方法】実験動物にはFisher344雌ラットを用い16週齢群(C)と1年齢群(1Y)2年齢群(2Y)を設けた.加えて,1年齢までに3ヶ月間の自発走運動を行った1YR群、2年齢までに1年間運動を行った2YR群も設けた.MNsoma標識としてHorseradishi peroxidase(HRP)を用い,脊髄摘出24時間前に10%HRP をEDLに注入した.筋機能として坐骨神経からの間接極大刺激による張力を測定した.脊髄は凍結し前角部の40μm連続縦断切片を作成,TMB染色とNR染色を行った.EDLも凍結し,50μm連続縦断切片を作成,ChE染色と鍍銀染色からNMJを判別した.MNsoma、NMJサンプルは光学顕微鏡にて観察し,cell Sence(ORIMUPUS)で計測を行った.【結果・考察】筋張力はC群に対し1YT群以外は有意な低値を示した.筋線維径も同様の結果を示し,老齢期に筋萎縮が起こることが確認された.運動終板長,運動終板面積もC群に対し1YT群以外は有意な低値を示した.同年齢の運動群とコントロール群間にも差が認められた.1年齢までの運動は老化を抑制し,2年齢では老化の影響が大きいが,運動による低下率抑制が認められる.MNsoma面積はC群と各群間に差は認められなかった.従来の報告では,MNsomaの変性は2年半齢以降に確認されており,2年齢まででは変化が認められなかった.老齢期の筋力低下は筋線維萎縮、運動終板退行,神経筋接合部退行変化が関与することが示唆された.そして脊髄運動神経細胞体の変化は,その後に起こることが推察される.
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