研究課題/領域番号 |
24500807
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
早坂 浩志 岩手大学, 保健管理センター, 准教授 (00261553)
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研究分担者 |
立原 聖子 岩手大学, 保健管理センター, 准教授 (40613526)
立身 政信 岩手大学, 保健管理センター, 教授 (70137496)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 大学生 / ストレス |
研究概要 |
平成24年度学生定期健康診断時に全学生を対象にスクリーニング調査を実施した。昨年の震災発生から約2ヶ月後に実施した調査時と比較したところ,PTSD症状を示す学生は激減したが,うつ症状を示す学生の割合は変化がないという結果が得られた。さらに,2回の調査での同一学生の変化を分析したところ,昨年はPTSDあるいはうつ症状を示していた学生の約80%以上は症状が軽快していた。したがって,全体の傾向として学生は心理的には回復傾向にあることが明らかになった。 スクリーニング検査でPTSDとうつの両方の症状があると判定された学生,および実家が被災していてどちらかの症状があると判定された学生(ハイリスク群)57名に連絡をとり,46名と状況確認の面談を行った。そのうち7名は現在も心理的問題を抱えていたことから,カウンセリング等の臨床心理学的介入を実施した。さらに,面談の結果回復群と判断された学生6名に面接調査を実施して,震災に関わるどのようなストレスを体験し,どのように対処してきたかについて聞き取りを行った。 以上のハイリスク群および保健管理センターへの来談学生への臨床心理学的援助および回復群への面接調査をとおして,震災体験が学生に与えた影響は,「直接的影響」(地震や津波によるストレス,トラウマ反応,実家の被災による喪失体験等)と,「間接的影響」(学生の悩みは震災のことではないが,問題の背景や経過に震災の影響が認められる)に分けられることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学生の震災ストレスからの回復に効果的な臨床心理学的介入を検証し,回復の促進要因と回復要因を明らかにしていくことが本研究の目的である。そのための資料として位置づけられる,スクリーニング調査結果に基づくハイリスク学生への臨床心理学的介入および回復群への面接調査を当初の予定通り実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおり,平成25年度も全学生を対象にしたスクリーニング調査の実施,ハイリスク学生への臨床心理学的介入,そして回復群の学生への面接調査を実施をとおしてさらなる資料の収集を図る。 しかし,前年度のスクリーニング調査やハイリスク学生との面接結果から,当初の計画にあるハイリスク学生を対象にしたピア・サポート・グループの組織化は困難であると考えている。したがって,間接的なピア・サポートの効果検証への計画の変更,すなわちハイリスク学生や回復群の学生の事例を整理して体験談としてまとめ,被災学生に向けて大学生活での留意点や回復のポイントを示した冊子を作成し,その効果を検証していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定よりも回復群の面接調査の対象者が少なくなったため,調査補助者の謝金による支出が少なくなり,結果的に数千円の予算残額が生じた。次年度は面接調査対象を増やす予定であるのでその経費として使用する。
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