研究課題/領域番号 |
24500807
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
早坂 浩志 岩手大学, 保健管理センター, 准教授 (00261553)
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研究分担者 |
立原 聖子 岩手大学, 保健管理センター, 准教授 (40613526)
立身 政信 岩手大学, 保健管理センター, 教授 (70137496)
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キーワード | 東日本大震災 / 大学生 / ストレス |
研究概要 |
平成25年度学生定期健康診断時に全学生を対象にスクリーニング調査を実施した。過去2回の調査結果と比較したところ,PTSD症状およびうつ症状を示す学生の割合は年々減少していた。また,学生の3年間の症状の有無の変化パターンを「影響低群」,「回復群」,「再燃群」,「影響高群」に分類し,被災の有無による群の比率の違いについて検討した。その結果,PTSD症状に関しては,被災の有無と群の比率には有意な関連があり,被災学生は非被災学生に比べて影響低群が少なく,回復群など他の群が多い傾向があった。一方,抑うつ症状については被災の有無と群の比率には関連はなかった。 スクリーニング調査において被災学生で高判定になったハイリスク群の学生には電話やメールで連絡をとり,該当の20名のうち15名に面談を行い,面談の結果回復群と判断された学生には面接調査を実施して,震災に関わるどのようなストレスを体験し,どのように対処してきたかについて聞き取りを行った。また,保健管理センターへ来談した被災学生にはカウンセリング等の臨床心理学的介入を実施した。これらの調査や援助的介入をとおして,震災の「直接的影響」(地震や津波によるストレス,トラウマ反応,実家の被災による喪失体験等)の訴えは減少傾向にあるものの,ふとした機会に再燃するケースもあることがわかった。「間接的影響 」(学生の悩みは震災のことではないが,問題の背景や経過に震災の影響が認められる)についても,時間が経過した後で家庭状況の変化等によって新たなストレスが生じるケースも見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学生の震災ストレスからの回復に効果的な臨床心理学的介入を検証し,回復の促進要因と回復要因を明らかにしていくことが本研究の目的である。当初計画どおり,平成25年度も全学生を対象にしたスクリーニング調査の実施,ハイリスク学生への臨床心理学的介入,そして回復群の学生への面接調査の実施をとおしてさらなる資料の収集を図るとともに,研究成果を論文や学会で報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にはなかったが,3年間で被災学生が直面してきた悩みや対処行動をより把握するため,教員を対象にした質問紙調査を実施する。また,ハイリスク学生や回復群の学生の事例を整理して体験談としてまとめ,被災学生に向けた大学生活での留意点や回復のポイントを示した冊子を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画にはなかった教員へのアンケート調査を実施することになり,回答のデータ入力で生じる謝金を次年度予算で支出することにしたためと,被災学生向けの冊子は次年度予算で作成することになったため。 教員へのアンケート調査および当初の研究計画どおり学生へのスクリーニング調査を実施し,それらのデータ入力補助者への謝金として使用する。旅費は当初計画どおり成果報告および資料収集のために使用する。また,その他経費は被災学生向けの冊子の作成をする際の印刷費として使用する。物品費は以上の研究活動や被災学生への面接調査で生じる備品・消耗品のために使用する。
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