研究課題/領域番号 |
24500814
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
宮松 直美 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90314145)
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研究分担者 |
岡村 智教 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00324567)
盛永 美保 滋賀医科大学, 医学部, 客員講師 (60324571)
田中 英夫 愛知県がんセンター(研究所), その他部局等, 疫学予防部部長 (60470168)
目片 英治 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80314152)
志摩 梓 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20635958)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | がん検診 / 未受診者対策 / 産業保健 / 乳がん / 子宮頸がん / 啓発 |
研究概要 |
H24年度は、県下の事業所に勤務する20歳以上の女性4789名を対象とした「女性特有がん検診受診行動とその関連要因に関する自記式質問紙調査」の結果から、①過去にがん検診を受診したことがあると回答した割合は乳がん39%、子宮がん53%、②両がん検診とも年齢層が高いほど受診経験保有者が多い、しかしながら、③1年もしくは2年ごとに受診していると回答した割合は両がんとも全体の約17%と低いことを明らかにした。 「受診を躊躇する理由」は、乳がん・子宮がんともに未受診者ほど選んだ個数が多く、また若年齢層ほど多かった。受診歴別(定期受診/不定期受診/未受診)には、乳がん検診ではどの受診歴でも「特に自覚症状もなく健康だから」で全体の47%であり、未受診者では次いで「マンモグラフィが痛そうだから」が多かった(30%)。子宮頸がん検診では定期受診群、不定期受診群ともに「内診がいやだから」を選択したものが最も多かった(25%、35%)。 検診の自己負担額の許容額は、乳がん検診では、無料21%、~1000円30%、~3000円32%、~5000円7%、5001円以上が2%であった。子宮頸がんも同様の傾向で、両がん検診とも無料~1000円との回答が過半数を占めた。検診費用を約10000円とすると、その半分を企業が補助金として給付したとしても受診率向上は2~9%と推測された。 この結果を受けて、①自覚症状の有無にかかわらず定期的な受診が必要であること、②検査の具体的内容、③企業や自治体による補助金制度等を含んだ「乳がん検診受診勧奨マンガ小冊子」、および従来型の情報提供用リーフレットの素案を作成した。次年度はこのマンガ小冊子とリーフレットを用いて、事業所単位で無作為に割り付けられた比較対照研究を実施し、過去2年間でのがん検診受診の有無を主評価指標として介入効果を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度交付申請時の実施計画として、①乳がん・子宮がん受診勧奨啓発ツールの開発(ターゲットメッセージの抽出、正確な知識の提供、プレゼンテーションの専門家による啓発媒体の制作)、②開発された受診勧奨ツールを用いた、無作為割り付けによる異なった啓発強度での啓発介入、③啓発活動後の乳がん・子宮がんに関する知識および受診状況の評価、④分析および成果公表の4点を挙げた。 ①については、「女性特有がん検診受診行動とその関連要因に関する自記式質問紙調査」の結果を受けて、自覚症状の有無にかかわらず定期的な受診が必要であること、検査の具体的内容、企業や自治体による補助金制度についての情報提供等を含んだ「乳がん検診受診勧奨マンガ小冊子」、および従来型の情報提供用リーフレットの素案を作成した。マンガ小冊子は、プレゼンテーションの専門家であるマンガ作家に制作を依頼した。②、③については介入予定である協力事業所の希望により、平成25年度に実施することとなり、今年度は介入事業所の振り分け方法や介入強度、情報提供の媒体、社内インターネットによる情報発信システムの構築等についての検討を行った。④の分析および成果公表については、5国内学会発表、1論文によりその成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、H24年度に開発された受診勧奨マンガ小冊子とリーフレットを用いて、①事業所規模で無作為割り付けられた比較対照研究を実施し、過去2年間でのがん検診受診の有無を主評価指標として介入効果を検証する予定である。加えて、②啓発の費用対効果分析が可能なデータベースの構築、③分析および成果公表を行う。①については、平成25年9月~11月に、125事業所をその規模より層化した上で無作為割り付けし、介入強度を変えた女性特有がん検診受診啓発勧奨の啓発介入を実施する。介入効果の評価として、平成25年度の基本検診受診時に前回と同様の「女性特有がん検診受診行動とその関連要因に関する自記式質問紙調査」を実施し、乳がん・子宮がん検診に関する知識や態度、受信状況の調査を行う。また、協力企業の健康管理室より、がん検診受診の補助金の申請状況に関する集計データの提供を受けることにより、受診状況だけでなく補助制度の活用状況についても評価する。②については、①で得られた情報を一元的に管理するデータベースを構築するとともに、啓発資材の単価計算等により啓発に要する総コストを、介入強度別に算出する。 H26年度は、①非介入事業所の対象者に対して、その不利益を減ずる観点から、H25年度の受診勧奨啓発介入に準じた介入を実施する。加えて、当該企業のレセプトデータと検診データの突合を行い、②がん検診受診勧奨とその他の生活習慣病の管理状況との関連を検討しうるデータベースを構築し、③分析および成果公表を広く行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
数千人の従業員を対象とした質問紙調査を健康診断時に実施するため、調査票の回収や確認のための訓練された研究補助員の配置が円滑な調査の遂行上不可欠である。その調査の遂行にかかる人件費とデータの入力費用を計上した。また、啓発に必要なマンガ小冊子の印刷はH24年度予算で実施したが、その他の啓発媒体(リーフレットや検診問合せ機関一覧等)についての大量の印刷が必要であり、その費用を合わせて計上した。さらに、我が国は乳がん・子宮頸がん検診受診率が諸外国として低く、今後の取り組みには世界的に関心が寄せられている。本申請課題は、我が国の乳がん・子宮頸がん予防・早期発見の主要な対象集団である年齢層の就労女性を対象とした大規模調査であり、我が国の国民に向けた成果公表はもちろんのこと、国際学会ならびに国際誌への投稿により広く世界に成果を公表することが必要であると考える。したがって、その実現のために投稿料に加えて旅費を計上した。
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