研究課題/領域番号 |
24500819
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
入江 正洋 九州大学, 健康科学センター, 准教授 (00248593)
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研究分担者 |
玉江 和義 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (80341527)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パワー・ハラスメント / メンタルヘルス / チェックリスト |
研究概要 |
近年、経済のグローバル化や高度情報化などによって雇用形態や就労環境が大きく変わり、労働者のメンタルヘルスが悪化している。なかでも、パワー・ハラスメント(以下パワハラと略)を始めとする職場でのいじめや嫌がらせが近年問題視されている。パワハラか否かの判断は多くの場合容易ではないが、その判断指針となるようなチェックリストがないことによる取り組みの遅れは否めない。 そのため、パワハラ対策に役立つツールを開発し、その有用性に関する調査を行い、さらにパワハラ対策への応用を検討することを目的として今回の研究を企画した。 初年度の平成24年度では、申請者がパワハラに関する講演や研修を行った企業の労働者に対して、どのような言動がパワハラとして感じられるかを調べるための予備的な質問紙調査を実施した。さらに、パワハラに関する文献、書籍、DVDなどの資料、ならびにパワハラと結審された判例における具体的な言動なども参考にして、暴行、暴言、無視、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制や仕事の妨害、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた仕事を命じる行為や仕事を与えない行為、プライバシーの侵害、などに関する37項目からなるパワハラチェックリストを試作した。 そのような手順で作成したチェックリストを、事務系企業と製造業系企業の2社の労働者931名を対象として実施した。そして、得られた回答について因子分析により潜在的構造解析を行ったところ、3因子が抽出された。しかし、3因子の項目数にかなりのばらつきがみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
37項目からなるパワハラチェックリストを試作し、事務系企業と製造業系企業の2社の労働者931名を対象として実施した。しかし、因子分析による解析では、3因子が抽出されたものの、第1因子として抽出された項目数が多くばらつきがみられたため、解析方法やチェックリストの項目についての再検討が必要と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
作成予定のパワハラチェックリストを用いた企業内のパワハラの実態調査を実施し、特に上司と部下のパワハラの認識の違いやパワハラの背景、上司のパワハラ傾向と部下のメンタルヘルスや疲労蓄積度との関係に焦点を当てる。その結果を踏まえて、管理職を対象としたパワハラやコミュニケーションに関する教育を行い、管理職への教育効果と部下のメンタルヘルスや疲労蓄積度などの改善について検討する。 今後このような展開を予定しているが、ストレスチェック制度の義務化などによって当初予定していた企業での調査が不確定な状況にある。その場合は、調査対象企業を変更するが、それに伴って調査内容の変更も生じる可能性がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の調査結果に、さらなる解析や項目の検討を加えてパワハラチェックリストを試作する。そして、職種や性別、年齢によるパワハラ傾向の違いについて検討し、属性によらないパワハラチェックリストの作成を目指す。チェックリストの内容が属性で著しく異なれば、属性別にチェックリストを作成する。作成されたパワハラチェックリストを同じ労働者に一定期間を空けて再試行し、他の類似した尺度との基準関連妥当性について調べる。 そのような信頼性や妥当性の検討から、重要と思われる項目を抽出して最終的なパワハラチェックリストの作成を行う。 平成24年度は、調査の実施が遅れたため、申請者自身でデータ入力を行い、研究補助の謝金が発生しなかった。そのため、使用予定としていた金額の未使用が生じている。平成25年度はそのようなことがないようにできるだけ早めに調査を実施し、謝金として使用する予定である。しかし、その前にチェックリストの見直しの作業が必要であり、またパワハラに関するさらなる情報収集(次々に新しい情報が発生しているため)も要することから、それらに関する使途も予定している。
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