研究実績の概要 |
平成26年度の研究で作成したパワーハラスメント(以下、パワハラと略)チェックリストに不備があったため、平成27年度の研究では、パワハラチェックリストについて再度検討し直して、パワハラ行為、パワハラ状態、パワハラ態度の3因子、総数18項目からなるパワハラチェックリストの最終版を作成した。複数の企業の労働者を対象とした調査では、このチェックリストとNegative Acts Questionnaire-Revised 日本語版との間には併存的妥当性があり、パワハラチェックリストによるパワハラを受けた者の方が、受けなかったものよりも、K6による抑うつ得点が有意に高く、判別的妥当性が認められた。 また、平成24年に、厚生労働省からパワハラの概念として、「同じ職場で働く者に対して, 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に, 業務の適正な範囲を超えて, 精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」との定義が発表されたため、これを用いたパワハラの有無と、パワハラチェックリストでのパワハラの有無との関係を調べたところ、厚生労働省の定義によるパワハラ体験がなかった群よりもあった群の方が、3因子の得点と合計得点が有意に高く、厚生労働省のパワハラの概念にも矛盾しないことが判明した。 その他、事務系の企業社員を対象とした調査では、今回のパワハラチェックリストによるパワハラを受けた者の方が、受けなかった者よりも、過去1ヶ月(K6)だけでなく、過去1週間(CES-D)の抑うつ度も有意に高く、職場の雰囲気(NIOSH調査票)が悪かった。つまり、今回開発したパワハラチェックリストの応用性が認められた。
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