研究課題/領域番号 |
24500824
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小林 法一 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (30333652)
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研究分担者 |
山田 孝 目白大学, 保健医療学部, 教授 (70158202)
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キーワード | ヘルスプロモーション / プログラム開発 / 介護予防 / 地域支援 |
研究概要 |
本研究は,介護予防プログラムに参加する当事者が,自分の判断で参加の必要性を認識し,自分自身でニーズを同定するという,当事者主体の評価システムを開発しようとするものである.これにより当事者は,「受け身的参加者」から,「積極的参加者」へと変化し,介護予防の効果が高まるものと予想される. 申請者は2007年より自治体の協力を得て試行を開始し,評価システムの妥当性および効果の検証を実施している.その成果は報告しているが,これまで主に都市部で実証を重ねたという地域の偏りがある.この点を是正した上で実施マニュアルを作成し,広く普及を図るのが本研究の主目的である. 地方都市でのデータ収集は昨年度の2都市に加え,岩手県気仙沼市で収集を終え概ね完了した.今年度はこのデータを分析して結果をまとめた.すでに論文投稿の作業に入っている.主な結果としては,大都市との相違,すなわち地方都市在住者は比較的初期から生活に密接した具体的なニーズを明らかにできるのに対し,大都市在住者の初期ニーズは抽象度が高く具体性に乏しいという傾向が認められた.さらに我々が考案した評価システムによって参加者自らニーズを明確に認識し,「積極的参加者」に変わっていく経時的変化を捉えることができた.新たな対象者として,認知症者および通所リハ利用者を加え,「自己学習型ニーズ評価システム」の適応を検討した.科学的な成果は分析中であるが,実施場面では好感触を得ている. プログラムの普及促進に関しては,昨年度に続いて今年度も専門家向けのワークショップを開催した.内容も昨年と同じく開発の経緯,効果研究の紹介,期待する成果と実証結果,使用物品など,プログラム運営に必要な情報および資料の提供をおこなった.参加者の反応については概ね良好であった.「大いに現場で活用できる」,「参加者をどのように集めるのか」などの感想や具体的質問があげられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度積み残した地方都市在住者のデータ約20名分の収集を行い,当初計画のサンプルサイズを達成した. 研究成果の普及促進活動についても,ワークショップ1回限りではあるが実施した. 今年度と来年度で合わせて3地区で介入効果の検証を行う計画であるが,今年度は1地区で実施した.来年度はすでに1地区で開催が決まっており,未計画の1地区と合わせて目標を達成できる目処が立っている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から引き続いてデータ収集を行い,以下の観点から分析を行う.この成果をプログラムの修正に活かす.また併せてマニュアルの改訂も行い専門職への普及促進活動を行う. (1)地方都市および大都市部でのデータを合わせた全体的な前後比較 (2)量的尺度については,地域差を統計学的に分析 (3)評価システムについては,次の観点から地域差の影響を検討 ①介護予防プログラムにつながるニーズが引き出せるか否か ②具体的な健康行動が開始されたか ③結果に影響した因子(交絡因子を調整した地域差) 本評価システムは介護予防向けに開発を進めてきたが,さらに認知症や要介護者にも応用できないか,研究の範囲を広げる.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に計画していた研究成果の専門職への普及促進活動が1回のみしか実施しなかったこと,およびこの活動経費が見込みより大幅に低予算で済んだためである(特に公的な会場を借りることで会場費を圧縮できた). 今年度実施できなかった「研究成果の普及・還元活動」を来年度に行う.
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