研究課題/領域番号 |
24500828
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
内田 勇人 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (50213442)
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研究分担者 |
江口 善章 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (10249469)
西垣 利男 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20057376)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者 / 児童養護施設 / 児童 / 高齢者イメージ / 自然体験活動 |
研究概要 |
本研究は、高齢者と児童養護施設入所児童の間の世代間交流効果について、世代間交流が児童の高齢者イメージに及ぼす影響を中心として明らかにすることを目的とした。 研究参加者はA児童養護施設に入所する小学1年生から6年生までの児童22人(男子11人、女子11人)と地域の高齢者ボランティア5人(男性2人:72歳、78歳、女性3人:62歳、68歳、70歳)であった。2012年9月に世代間交流プログラムを実施した。交流内容は、周辺の散策、フィールドアスレチック、スケッチ、季節みつけなどであった(約2時間)。調査項目は「性別」「年齢」「学年」「氏名」「高齢者に対するイメージ」を選択した。イメージ調査にはSemantic Differential(意味微分法、以下SD法と略す)法による尺度を用いた。 プログラム前の評価性因子の得点は「温かい、4.4点」「正しい、4.3点」であり、いずれも中立点の3点を上回っていたことから、初期の時点で、高齢者に対して道徳的・倫理的に良好なイメージを抱いていることが示唆された。一方、「はやい」は中立点を下回り(2.6点)、「忙しそう」「強い」も中立点に近い3.1点や3.0点を記録するなど、活動性・力量性因子においては、評価性因子に比べ、中位からやや優位といったイメージを抱いていることがわかった。中野の先行研究においても、本研究と同様の傾向が示されており、児童養護施設入所児童の高齢者イメージは、一般の小学生と比べても大きな差はないことが示唆された。プログラム後には「話しやすい(p<0.01)」「頼りがいがある(p<0.05)」の各得点が有意に高くなっており、高齢者との里山での世代間交流が、児童の抱いている高齢者イメージをポジティブな方向に変化させたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、高齢者と児童養護施設入所児童の間の世代間交流効果について明らかにすることを目的として実施しているが、当初考えていた研究計画以上に、①研究参加者の承諾、②調査実施場所の協力、③自然体験活動プログラムの実施等が、スムーズに進展している。 具体的には、本研究の遂行にあたって、A児童養護施設の全面的な協力、参加が得られている。今年度は、種々の理由により児童養護施設へ入所・養育されている児童の高齢者イメージへ及ぼす世代間交流効果について、調査研究を実施することができた。 調査を実施するにあたり、高齢者と児童養護施設入所児童の交流場所として、A市の主要企業の代表者が設立したNPO法人が運営する里山公園を定期的に使用することができ、充実した世代間交流プログラムの実施が可能であった。参加した高齢者への介入研究と合わせて、大変充実した研究が遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は自然体験活動支援プログラムのみの直近的な実施効果を分析したものである。今後は種々の交流プログラム(楽器演奏支援、教育支援ほか)を実施し、本研究で認められた「話しやすい」「頼りがいがある」といった高齢者イメージ得点が同様に向上するのか、別の変化態様を示すのかについて、詳細な検討を加えたいと考える。本研究は対象として選択できた児童の人数が少なかった。 他の児童養護施設にも協力を求め、多くのデータによる分析を試みたい。調査内容は高齢者イメージ得点を主としたが、今後は入所児童の養育事情、および心身の状態に最大限の配慮をはらいつつ、自己効力感や精神的健康度、対人関係といった心理社会的側面に関する検討も行い、多面的に高齢者ボランティアによる養護支援が入所児童の心身の機能、生活の向上に及ぼす影響に関する研究を進めていきたいと考える。 児童養護施設入所児童へのさらなる養護、生活支援が必要であり、施設のみならず、地域・社会との益々の有機的な連携が求められていることが指摘できる。引き続き、高齢者と児童との間における種々のプログラムの具体的な交流効果について明らかにしていきたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画として、「物品費」として調査用紙のトナー費、「旅費」として、他県(福岡県)の児童養護施設での調査を予定しており、これら研究打ち合わせ、調査、国内外の学会(日本世代間交流学会、日本公衆衛生学会、アメリカ老年学会等)、「その他」として、「学会誌への掲載料」「国内外の学会への参加費」等を考えている。
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