研究課題/領域番号 |
24500828
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
内田 勇人 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (50213442)
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研究分担者 |
江口 善章 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (10249469)
西垣 利男 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20057376)
黒田 次郎 近畿大学, 工学部, 講師 (20597992)
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キーワード | 児童養護施設 / 高齢女性 / ボランティア / 大学生 / 児童 / イメージ / 世代間交流 |
研究概要 |
本研究は、児童養護施設入所児童に対する世代間交流プログラムの実施が児童の高齢女性ボランティア、および大学生イメージに及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。 プログラム前後における児童の高齢女性ボランティアイメージを測定したところ、プログラム前の評価性因子の得点が「温かい、4.42点」「正しい、4.33点」であり、いずれも中立点の3点を上回っていたことから、初期の時点で、高齢女性ボランティアに対して良好なイメージを抱いていることが示唆された。一方、「はやい、2.50点」「忙しそう、2.92点」は中立点を下回り、「強い」も中立点の3.00点を記録するなど、活動性・力量性因子においては、評価性因子に比べ、ニュートラルからややポジティブという程度のあまり高くないイメージを抱いていることがわかった。 プログラムの前後で、児童の高齢女性ボランティアイメージを比較したところ、プログラム後に「話しやすい」「頼りがいがある」の各得点が有意に高くなっていた。高齢女性ボランティアとの里山での世代間交流経験が、児童の抱いている高齢女性ボランティアイメージをポジティブな方向へ変化させたことが示唆された。その一方で、「忙しそうな」「はやい」「大きい」「強い」といった活動性・力量性因子の各得点においては、プログラムの前後で有意な変化はみられなかった。児童におけるプログラム前後の大学生イメージを測定したところ、プログラム前では「話しやすい、3.58点」「忙しそう、3.25点」の2項目以外の全ての項目で4点を上回り、大学生に対して評価性因子、活動性・力量性因子ともに良好なイメージを抱いていることがわかった。 本研究により、里山での交流は児童の抱く高齢女性ボランティアイメージをポジティブな方向に変化させたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、児童養護施設入所児童に対する世代間交流プログラムが、児童の高齢女性ボランティアと大学生の各イメージに及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。これまでに、児童が有する他世代へのイメージの変化に焦点をあて、世代間交流プログラムの効果を検証した研究はみられるが、高齢女性へのイメージと大学生へのイメージの両者を検討し、比較している研究はみられず、当初の計画以上に進展していると考える。 調査の遂行にあたり、A児童養護施設の多大なる協力が得られている点も指摘できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、研究参加児童数の増加を目指したいと考える。本調査は小学1年生から3年生までの児童に対しても実施された。しかしながら、イメージ調査の内容が抽象的で理解しにくい児童がみられたため、本研究からはデータを除いた。本調査項目は、小学校低学年においても実施可能であるが、新たな調査項目の選定と合わせて対応していきたい。 今年度は自然に囲まれた里山を舞台として世代間交流が行われたが、学習支援や室内での交流といった他のプログラムの交流効果についても明らかにしていくことが求められる。今回、高齢者イメージへの影響要因として示唆されたボランティアの児童に対する接し方や態度についても検討を重ねる必要があると思われる。また、児童がイメージしている高齢者と大人がイメージする高齢者とでは、年齢や身体的・精神的状態が異なる可能性が考えられる。すなわち、小学生の祖父母の多くは、50歳代、60歳代初めの高齢者であることが推察され、本研究のプログラムの前に実施したイメージ調査は、その祖父母を思い浮かべて高齢者イメージを評価した可能性は否定できない。今回の調査では、プログラム前の段階で児童がイメージした高齢者の年齢を尋ねていない。今後調査を実施する上では考慮すべき必要があると思われる。 今回の研究では、世代間交流プログラム前後の児童の抱く高齢女性ボランティア、大学生イメージの変化態様を調べ、それらを比較したが、児童の抱くイメージは高齢女性と大学生との間で異なる可能性が示唆された。今後は、高齢者や大学生が児童に対して抱くイメージ、さらに世代間交流前後の児童の精神的側面や身体的側面における変化を調べ、世代間交流のもたらす効果をさらに検証していきたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
出張旅費で使用予定であったが、出張の日数が短縮となり残額が発生した。 地域在住高齢者による児童養護施設入所児童への教育支援活動(主に宿題等に対する教育支援)が児童の高齢者イメージ、自己効力感に及ぼす影響について明らかにする予定である。翌年度分の助成金と合わせて、これら調査研究に必要な調査アンケート用紙代、プリンタートナー代、調査謝金、成果を発表する学会への旅費として使用する計画である。
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