研究課題/領域番号 |
24500840
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
鶴 浩幸 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 講師 (10330044)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 該当なし |
研究概要 |
多くの国民が耳鳴を訴えているが、耳鳴の多くは自覚的であり、かつ原因不明とされるものが多く、治療困難であることが少なくない。また、薬物療法はあまり効果がないことが指摘されている。一方、耳鳴に対して鍼治療が行われることがあり、耳鳴が軽減したとする報告がみられる。しかし、科学的な概念や基礎的データに基づく刺鍼部位の選択理由や鍼治療効果およびその効果発現の機序については不明な点が多い。このような点を解明するための第1段階の研究として、顔面部や頚部の自動運動や体性感覚刺激が自覚的耳鳴に与える影響を検討することを目的として研究を行った。本研究の実施により、耳鳴治療に対する鍼刺激部位を選択するための診察法や鍼刺激の治療部位として、また、耳鳴を有する者がセルフケアを行う際の刺激部位として応用発展させるための基礎的研究となることが予想される。対象は耳の疾病をもたない者で、静かな環境下で自覚的耳鳴を感じる健康成人ボランティア9名(平均年齢25歳)とした。被験者は使い捨ての耳栓とイヤーマフを装着して防音室に入室後、以下の介入により耳鳴が変化するか否かが検討された。1. 頚部や顔面部の自動運動を30秒間、2.頚部や顔面部の経穴などに指頭での圧迫刺激を30秒間、3.手部や耳部の経穴などに経皮的ツボ電気刺激を30秒間行った。耳鳴は、標準耳鳴検査法1993 における耳鳴の自覚的表現の問診票に基づいて作成した評価表により、耳鳴の大きさや耳鳴の持続、音質の変化などが聴取された。その結果、1. 頚部や顎関節の運動により耳鳴の大きさが軽減したものが5例みられた。2. 頚部・頬部・前額部の圧迫により耳鳴が軽減したものは4例、消失したものは1例であった。3. 通電刺激により耳鳴が軽減したものは6例、消失したものは3例であった。本研究により、耳鳴が筋収縮や圧迫刺激、通電刺激によって軽減する場合のあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・父の入院、およびこれと同時期に母の心身の健康状態が悪化し、一時的に介助が必要となり、これらに時間がとられたため。 ・授業やその他の業務に予想以上の時間がとられたため。 ・平成25年度に教室の移動があったため、業務の移行などに時間がとられたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究(実験)内容を平成25年9月まで継続する。 平成25年度10月からは頚部や耳周囲、上肢などを先端の直径が約1 cm 程度のプッシュプルゲージを用いて圧迫し、圧刺激によって 耳鳴の大きさや音質が変化する部位をさらに検討する。圧迫する部位は手部や頚部、側頭部、頬部、乳様突起部、耳周囲などの東洋医学において耳に関連するとされる経穴、または過去の報告に基づき、耳鳴が変化する可能性が考えられる部位とする(平成24 年度の研究で、筋収縮や通電刺激、指頭での圧刺激により耳鳴が変化した部位を含む)。圧刺激によって耳鳴が変化した場合は、どの程度の強さ(kgf)で耳鳴が変化したかを記述する。次に、経皮的ツボ電気刺激による通電刺激やプッシュプルゲージによる圧刺激によって自覚的耳鳴が変化した経穴に鍼刺激を行い、鍼刺激が耳鳴に与える影響を検討する。鍼刺激は5 mm から1 cm程度の深さに鍼を刺入し、そのままにしておく方法(置鍼)を用いる。鍼刺激前後の耳鳴の大きさや音質の変化を平成24年度の研究で使用したVAS や評価表を用いて検討する。また、何種類の耳鳴が聞こえるかについても聴取する。なお、どの程度の強さ(kgf)の 圧刺激で耳鳴が変化したかを調べるために、今回はプッシュプルゲージを使用する予定であるが、プッシュプルゲージによる圧刺激では耳鳴が変化しにくい場合には、手の指頭による圧刺激に変えて研究を継続する。また、平成24年度、25年度に行った筋収縮(自動運動)、通電刺激、圧刺激、鍼刺激に対するVAS や耳鳴の評価表などの結果を用いて、耳鳴軽減に効果的な刺激方法や刺激部位について統計学的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
経皮的ツボ電気刺激で使用する電極や鍼治療用具の費用、関連文献や関連書籍の収集や購入費用、研究成果発表のための旅費などに研究費を使用する予定である。
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