研究課題
心血管疾患発症リスク因子やそれを組み合わせたリスクスコアは、将来の冠動脈疾患の予測に有用であるが、その予測能は高くはなく、また、現時点の動脈硬化の程度を反映する物ではない。現時点での動脈硬化の程度を予測できれば、テイラーメイドの診療につなげることができる。我々は、冠動脈疾患の既往のない2型糖尿病における冠動脈病変を予測する臨床指標、心肺運動機能と頸動脈硬化、骨格筋細胞内脂肪量(IMCL)もしくは加増内脂肪蓄積(肝TG)と頸動脈硬化との関連について検討を行った。頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)と既存のリスクスコアを組み合わせることで、リスクスコア単独に比べて、冠動脈病変予測能が有意に向上することが示された。また、酸化LDLの一種であるMDA-LDLとLDL-CもしくはHDL-Cとの比を取ることで、MDA-LDL単独よりも冠動脈疾患の予測能が向上することが示された。また、血中脂肪酸分画もしくは血中ペントシジンと冠動脈病変には有意な関連は認められなかった。2型糖尿病患者において心肺運動負荷試験を行った検討では、最大酸素摂取量もしくは安静時と最大心拍の差(ΔHR)と心拍の変動係数であるCVRRに有意な関連が認められたが、頸動脈IMTとの間には有意な関連は認められなかった。MRスペクトロスコピー(MRS)を用いて2型糖尿病患者のIMCLおよび肝TGを測定したが、これらと頸動脈IMTとの間に有意な関連は認められなかった。以上の結果より、頸動脈IMTとリスクスコアとの組み合わせや、MDA-LDLとLDL-CもしくはHDL-Cとの比は、冠動脈疾患の既往のない2型糖尿病患者の現時点での冠動脈疾患予測に有用であると考えられた。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Journal of Diabetes Research
巻: 2015 ページ: 507245
10.1155/2015/507245.