研究課題
本年度の目標課題①アロキサン腹腔内投与による膵ベータ細胞でのインスリン産生量減少の確認②高血糖状態キンギョで抜去後再生する再生ウロコの骨芽細胞や破骨細胞のマーカー酵素活性・遺伝子発現を調べ、糖尿病状態での骨代謝を解析③糖尿病での骨強度に関連すると考えられる骨基質タンパクの糖化(I型コラーゲンの非酵素的糖化)の評価<結果>①のアロキサン投与量と膵ベータ細胞でのインスリン産生量減少の関連は、アロキサン投与後5日目にキンギョの膵臓を摘出し、薄切切片を作製後、魚類(Verasper moseri)のインスリン抗体を用いた免疫染色法により検討した。その結果、アロキサンを400mg/kg-体重以上腹腔内へ投与すると膵島でのインスリン産生量が減少し、500mg/kg-体重投与するとほとんど全ての膵島で著しくインスリン産生が低下することを確認した。②の高血糖糖尿病状態キンギョの骨代謝を糖尿病状態で再生した再生ウロコの骨芽細胞および破骨細胞のマーカー酵素活性を調べた。その結果、糖尿病状態モデルでは骨芽細胞および破骨細胞のマーカー酵素活性が共に正常群に比較し低値傾向を示したが有意な差はなかった。ただし、糖尿病状態モデルではアロキサン投与後に飼料摂取量が低下した。したがって、in vivo でのアロキサン投与では、骨代謝のマーカー酵素活性や遺伝子発現の変化は、栄養状態低下の影響と高血糖状態の影響との判別が困難と思われた。③高血糖状態でのI型コラーゲンへの非酵素的糖化(メイラード反応)をin vivoおよびin vitroで検討した。その結果、in vivoではコラーゲンアルファー鎖の分子量増加以外の有意の変化は得られなかった。しかし、長期の高血糖状態でグルコースが酸化、脱水、縮合反応を経て増加するグリセルアルデヒド添加のin vitro実験で、顕著にコラーゲン繊維間の架橋形成が過剰増加した。
2: おおむね順調に進展している
魚類のインスリン抗体を用いた免疫染色法を行った結果、腹腔内へのアロキサン投与による膵島でのインスリン産生低下が起きていることを確認できた。したがって、腹腔内へのアロキサン投与による高血糖状態は膵島でのインスリン産生量低下によることが確認できた。また、高血糖状態でのウロコの骨基質タンパク、特にI型コラーゲンの非酵素的糖化とそれに伴うコラーゲン繊維間の過剰の架橋生成を確認できた。このことは高血糖下でのコラーゲン繊維間の過剰の架橋形成による柔軟性喪失が、骨の物理的物性を大きく変え、骨をもろくしているという仮説の根拠を示した重要な成果と思われるため。
本年度のin vitroでの研究から長期の高血糖状態では骨のコラーゲン繊維間の過剰架橋形成による骨の物性変化(柔軟性喪失)が糖尿病における骨折増加に寄与している可能性が得られた。一方、in vivoでのアロキサン投与後の骨代謝の変化には、高血糖以外に栄養状態の低下の影響が避けられないことが確認された。そこで、in vitro実験でグリセルアルデヒドなどの糖中間代謝物が非酵素的にコラーゲン繊維間を架橋する反応に酸化が強く疑われるので、酸化剤や還元剤がコラーゲン繊維の架橋に及ぼす影響を詳しく検討する。また、アロキサン誘発性の高血糖状態を長期にわたって維持することが困難であったため、in vivoでの運動によるコラーゲン繊維の過架橋改善を検討することは、次年度応募する薬剤によらない高血糖キンギョモデルで検討する。
高血糖状態キンギョのウロコの遺伝子発現解析が完了しなかったので、予算を使いきらなかった。次年度に遺伝子発現解析のための予算配分を行い実施する。消耗品:H26年度は、実施に必要な器具・プラスチック類で500千円を計上している。また、高血糖状態でのウロコの骨代謝に必要な遺伝子解析用キット・試薬類が多く必要で、600千円を計上している。さらに、I型コラーゲンの非酵素的糖化の解析に必要な器具・試薬類で150千円計上している。実験に必要な実験動物として、キンギョを合計100匹で52.5千円計上している。旅費:成果発表国内旅費で150千円計上している。
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