研究実績の概要 |
1, 2 年度は高齢retired ratを用い4週間の運動負荷を行った。非運動負荷群では体重増加が続くのに対し、運動負荷群では有意な体重の減少がみられた。さらに両群でラット孤立心筋を用いて虚血・再灌流実験を行った。心筋の虚血域は運動負荷ラット群で減少傾向にあったが、有意差は認めなかった。以上から高齢ラットでの運動療法は体重減少効果をもたらすが、虚血発作時の心筋保護作用については不明である。しかし、高齢ラットでも運動負荷で、明らかな体重減少を認めたことは有意義であると思われた。 最終年度は20年以上運動を続けている高齢者(65歳以上)と、非高齢者(50歳以下)で運動を行う前後の心血管系の変化について比較調査を行った。週末のグラウンドでサッカーの練習試合形式(20分間を2,3回)の運動を行い、前後の変化を測定した。心拍変動解析装置による交感神経系の緊張、最高血圧は両群ともは運動後に減少した。組織還流係数TPI:tissue perfusion index)も運動負荷後は改善した。寒冷時期(12-1月)では運動前に測定できなかったTPIが運動負荷後にはすべての被験者が測定可能となるという興味ある事実が判明した。今回の研究で運動療法は血管抵抗を減少させ、血圧の減少を誘導したと推測される。これらの情報から高齢者の運動でもeNOS活性を通じて血管拡張、血圧減少という効果をもたらしていることが推測された。また、高齢者の寒冷刺激による末梢循環の悪化が運動で軽減される。今後の研究で高齢者の運動と健康(とくに心筋保護効果)との関連が解明できれば、高齢化社会における医療費削減にもつながると思われる。
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