研究課題
本研究ではWistar系ラットの近交法により確立した「心房内血栓自然発症モデルラット」への食物由来成分の投与が、心房血栓形成の予防に有用であるかを検討することを目的とした。当モデル動物は心房血栓形成に重要であると考えられている心房細動はほとんどみとめられないことから、心房血栓形成には他の要因が関与していると考えた。血栓形成にはウィルヒョウの3要素としても知られているように心血管の内皮機能障害も1つの要因である。そこで当モデルラットの内皮機能と一酸化窒素(NO)産生量に着目した。血管張力測定により大動脈の内皮機能を測定すると、モデル動物は内皮依存性の弛緩反応が有意に減弱していることが確認された。さらに、モデル動物の生体内NO量が顕著に低値を示したことから、心血管内皮のNO産生能が低下している可能性が示唆された。さらに、内皮依存性NO合成酵素(eNOS)の発現量を確認すると、心房および大動脈での有意に低下していた。さらに、NOの基質であるL-arginineを投与すると、NO量の上昇とともに心房血栓のサイズが小さくなった。以上の結果より、本モデル動物では血管や心房内皮のNO産生能低下により心房内での血栓形成が助長されている可能性が考えられた。心血管の内皮細胞は血管の張力調節作用のほかに、抗凝固作用を有するNOを産生し、心血管の恒常性維持に働いている。心血管内皮の一酸化窒素産生能をコントロールすることが心房内血栓形成予防に重要であると考えられた。次に、心血管内皮に作用する食物由来成分の検索とその効果について検討した。まず、Blueberryポリフェノール(BBP)を野生型Wistarラットに投与し、血管内皮機能を評価すると改善効果がみとめられた。さらにラット大動脈組織を用いたin vitro実験でも内皮依存性血管弛緩作用がみとめられた。これらの成分が心房血栓の抑制や予防に応用できる可能性が示された。
すべて 2014
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