平成25年度に実施予定であった複合栄養素の「質」、「量」についての研究を実施した。異なるエネルギーかつ極端な食事組成ではなく適切な比率に着目し、異なる糖・脂質組成比率の飼料をラットに摂取させ、生体に及ぼす効果について検討した。9週令の雄性SDラットを3群に分け、各群に糖質エネルギー比率が60・50・40%の飼料を8週間与え飼育した(RD)。各群の1食当たりのエネルギー量(80kcal)およびたんぱく質の比率は一定とし、残りの比率を脂質に置換した。さらに、RDの80%エネルギーになる制限食(CRD)を作成し与えた。また、解剖時に各群を絶食群と再摂食群の2群に分け、食後の代謝動態の差異について、肝臓内脂肪量、肝臓における代謝関連遺伝子の発現量を測定した。同一のエネルギー間における各群の摂餌量、体重増加量および組織重量に有意な差はみられなかった。しかし、血中中性脂肪濃度はすべての群において正常範囲内であったが、60%群は40%群に比して高値を示した。また、RD群における肝臓内脂肪量は脂質の比率が上昇するにつれ増加を示したが、CRD群においては3群間に有意な差はみられなかった。脂質のde novo合成に関連する遺伝子の発現量を調べた結果、絶食群では各群の発現量に差異はみられなかったが、摂食群において60%群の発現量は40%群と比較し有意に増加した。また、脂肪肝の形成に関連する遺伝子であるPPARγ1やFSP27の発現量を調べた結果、RD群において、40%群が60%群に比して高値を示したが、CRD群において3群間に変化がみられなかった。エネルギーが適量である場合には、肝臓内中性脂肪の蓄積はPFC比率の影響を最も受けて蓄積が誘導され、エネルギー制限を行うと、肝臓への中性脂肪の蓄積に対しての影響が少ない可能性が示唆された。
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