研究課題/領域番号 |
24500865
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
高波 嘉一 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (40206777)
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研究分担者 |
川合 ゆかり (財)ルイ・パストゥール医学研究センター, 基礎研究部, 研究員 (80530253)
青井 渉 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (60405272)
村瀬 訓生 東京医科大学, 医学部, 講師 (10317894)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 介護予防 / サルコペニア / 廃用性筋萎縮 / 酸化ストレス / 慢性炎症 / アスタキサンチン |
研究概要 |
今年度は、本研究で使用予定の抗酸化栄養素アスタキサンチンが本当に筋萎縮を予防しうるかどうかを確認するため、ヒト試験の前に動物実験を実施することにした。これと同時に、当初の計画通り、虚弱高齢者向けの新規介護予防運動プログラムの開発と、加齢性骨格筋減弱の評価法確立に向けた基礎検討を並行して行った。 動物実験では7週齢のWister系雄ラットを使用し、アスタキサンチン食(Ax)群、コントロール食(Co)群に分け、さらに各群を除神経群、シャム群に分けた。除神経およびシャム手術の5日後に腓腹筋、足底筋、ヒラメ筋の採取を行った。得られた各筋サンプルにつき、重量測定、リアルタイムPCRによるmRNA発現量等の分析を行った。筋重量は同一個体の手術肢(g)/非手術肢(g)を求め、筋重量比として検討した。その結果、Co除神経群ではいずれの筋重量比も有意に低下したが、Ax除神経群では筋重量比の有意な低下が認められなかった。すなわち、廃用性筋萎縮の抑制にAx投与が有効である可能性が示唆された。また筋タンパク質分解系にかかわるMafbox、MuRF1のmRNA発現が、除神経手術により増加していたが、Ax投与の影響は認められなかった。アスタキサンチンの筋萎縮抑制のメカニズムについてはさらなる検討が必要と思われ、次年度も継続して分析を進める予定である。 虚弱高齢者向けの新規介護予防運動プログラムについては、ストレッチ、有酸素運動の要素を取り入れた既存の「サッソウいきいき体操」を改変し、これとレッグエクステンションやパワープレートによるアクセラレーショントレーニングなどのマシントレーニングを組み合わせたプログラムを開発し、短期的効果について少人数を対象とした予備検討を実施した。その結果、骨格筋量の少なかった対象者では、プログラム参加3ヶ月後に骨格筋量の増加がわずかに認められ、概ね適切なプログラムと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、虚弱高齢者向けの新規介護予防運動プログラムの開発は順調に進めることができた。ただ加齢性骨格筋減弱の評価法については、その解析がまだ終わっておらず、次年度にまたがることになった。 しかし、ヒト試験で使用する予定の抗酸化栄養素アスタキサンチンの筋萎縮抑制効果を、動物実験でまず確認することができたので、ヒト試験での有効性が認められる可能性がより高まったと考える。また今年度の動物実験において採取した骨格筋サンプルの詳細分析により、今後アスタキサンチンの効果のメカニズム解明が可能と考えられ、より質の高い研究に展開しうると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究計画の中心であるヒト試験ついては、加齢性骨格筋減弱の評価法について、その確立を目指すべくこれまで得られたデータの解析や追加検討をまず進める。また本年度に通所型介護予防施設における基礎検討を行ってみて、新たに顕在化した問題点として、介護予防プログラム参加者の身体機能面の個人差が予想以上に大きかったり、途中脱落者が少なくないことが挙げられる。研究として比較的均一な被験者を一定数集めるためには、一定基準を設ける必要があると考えられる。このため、特別なクラスの設置などを含めた対応策を施設側と協議し、被験者確保により積極的に取り組む必要があると考えており、当初の計画にできるだけ近い被験者数確保を目指し、まず横断研究から実施する。 動物実験によるメカニズム解明では、既存のラット骨格筋サンプルを用いて、炎症、酸化ストレス関連、タンパク分解系などを中心とした様々なmRNAおよびタンパク質の発現解析を行い、アスタキサンチンの筋萎縮抑制効果のメカニズムを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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