研究課題
基盤研究(C)
メタボリックシンドロームや2型糖尿病の最も重要な病態の一つであるインスリン抵抗性は身体不活動によりもたらされる肥満と密接に関わっているとされている。しかしながら、東洋人を始めとする非肥満者が多い民族では必ずしもこれは当てはまらない。この点に関して、不活動が肥満の発生とは独立してインスリン抵抗性を惹起する事象に対するメカニズムの解明は、非肥満者の病態を説明するのに重要である。これまでの我々のヒトにおける先行研究では、身体活動が少ない者ほど高脂肪食負荷による細胞内脂質の蓄積が大きく、インスリン感受性の低下が大きいことを明らかとしているが、身体活動量の減少と高脂肪食の骨格筋インスリン感受性に対する相加・相乗的な作用は不明である。そこで本研究では、短期間の不活動による筋インスリン抵抗性惹起の分子メカニズムを動物実験による機能解析で明らかにすることを目的として実験を行った。C57BL6J雄性マウスに対して、2週間の普通食あるいは高脂肪食負荷後に、不活動のモデルとして片側下肢を24時間ギプス固定し、骨格筋のインスリン感受性やインスリンシグナル伝達、LC-MSによる細胞内脂質組成を調査した。24時間のギプス固定は骨格筋のインスリン抵抗性を惹起し、高脂肪食負荷後にギプス固定を行った場合には、さらなるインスリン抵抗性を引き起こすことが確認された。これらのインスリン抵抗性の程度は、細胞内のDAGの蓄積量とインスリンシグナル伝達の減弱と関連していた。以上の結果より、マウスにおいて、不活動は24時間という極めて短時間でインスリン抵抗性を惹起させうることが明らかとなった。また、不活動と高脂肪食は骨格筋の相乗的なインスリン抵抗性惹起に関与し、その原因として骨格筋細胞内のDAG蓄積とインスリンシグナル伝達不全が重要である可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究結果より、身体活動量の減少と高脂肪食摂取の骨格筋インスリン抵抗性惹起の相乗効果について、一部分子機序が明らかとなってきた。今後、これをさらに発展させていく予定である。
今後、ヒトに対する実験による機能解析を行う。(サンプルは採取済み)今回明らかとなった動物実験での結果を基にヒトでの検証を予定している。
該当なし
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