研究課題/領域番号 |
24500868
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
古屋 徳彦 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50401188)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 筋萎縮 / 遅筋 / Parkin介在性マイトファジー / ミトコンドリア / オートファジー / プロテアソーム |
研究概要 |
骨格筋は筋収縮を引き起こす刺激を与えないと萎縮する。筋萎縮は筋肉内タンパク質の同化と異化のバランスが崩れ、分解が活性化することにより起こると考えられている。我々は、遅筋であるヒラメ筋の萎縮に細胞内のバルクなタンパク質分解を担うオートファジーが大きく寄与すること、さらにヒラメ筋の萎縮にはオートファジーそのものというよりもミトコンドリアの品質管理機構として働くParkin介在性マイトファジーが関わっていることを見出している。Parkinは常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソン病の原因遺伝子PARK2の遺伝子産物であり、その遺伝子変異または欠失によるミトコンドリア品質管理機構の異常が病態発症の原因であると考えられている。実際、除神経手術を施したオートファジー不能マウスやParkin欠損マウスのヒラメ筋では、呼吸鎖複合体活性の低下や活性酸素種の蓄積が認められ、Parkin介在性マイトファジーによって分解されるべき異常ミトコンドリアの蓄積が認められる。Parkin介在性マイトファジーの破綻が筋萎縮寛解を引き起こすメカニズムを解析したところ、除神経手術を施した野生型マウスヒラメ筋で認められるプロテアソーム活性化が、オートファジー不能マウスおよびParkin欠損マウスのヒラメ筋では認められないことが分かった。さらに野生型マウスヒラメ筋で観察されるプロテアソーム活性化は、プロテアソームサブユニットの発現上昇によって起こっていることが明らかになった。以上のことから、Parkin介在性マイトファジーの破綻による異常ミトコンドリアの蓄積は、除神経の際に誘導されるプロテアソーム活性化の抑制を引き起こし、その結果筋萎縮の寛解が起こると考えられる
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者はH24年度の実施計画として、(1)ミトコンドリア画分の解析、(2)筋肥大因子および筋萎縮因子の解析を交付申請書に記載していた。このうち、(2)に関してはその分子機構を明らかにすることに成功した。また、(1)に関しては現在解析を行っており、来年度には何らかの知見を得ることが出来ると確信している。そもそも申請書にも記載したように、H24年度の実施計画のうち解析が途中のものに関してはH25年度に解析を継続する計画であったため、概ね研究計画通り順調に研究が進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題は(1)「筋萎縮過程ではどのようにしてミトコンドリアの質の低下が起こるのか?」また(2)「質の低 下したミトコンドリアが蓄積すると何故筋萎縮が起こらないのか?」という二つの関連した問題を明らかとすることを目的としている。申請者は(2)に関して、H24年度の研究によって、質の低下したミトコンドリアの蓄積が筋萎縮の際に誘導されるプロテアソームの活性化を抑制することを明らかとした。H25年度においては、質の低下したミトコンドリアの何がどのようにプロテアソーム活性化に影響を与えているか、分子機構の詳細を明らかとすることおよび、(1)の問題についての分子機構を明らかにすることを目指す。この両者は密接に関係していることが予想されるため、単離ミトコンドリアを様々な生化学的解析により解析することにより、その足がかりを得る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
昨年交付申請書に記載したように、H25年度研究費に関しては研究に使用する試薬類、消耗品購入のための物品費500,000円、学会等参加のための旅費300,000円、および学術論文投稿料や英文校正などの費用(その他)200,000円を計上している。旅費としてはH25年度分で申請している額で十分であることから、H24年度に繰り越した予算に関しては、消耗品費およびその他の経費としての使用を予定している。
|