研究課題
筋萎縮は筋肉内タンパク質の同化と異化のバランスが崩れ、UPSやオートファジーなど細胞内タンパク質分解系が活性化することにより起こると考えられている。H24年度までの研究により申請者は遅筋(ヒラメ筋)の除神経萎縮にParkin介在性マイトファジー(PMM)が重要な役割を果たしていることを見出した。Parkinは常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソン病の原因遺伝子PARK 2の遺伝子産物であり、その遺伝子変異または欠失によるミトコンドリア品質管理機構の異常が病態発症の原因であると考えられている。実際、除神経手術を施したオートファジー不能マウスやParkin欠損マウスのヒラメ筋では、呼吸鎖複合体活性の低下や活性酸素種 の蓄積が認められ、Parkin介在性マイトファジーによって分解されるべき異常ミトコンドリアの蓄積が認められる。PMM不能マウス(オートファジー不能マウスおよびParkin欠損マウス)の遅筋では筋萎縮遅延が認められるため、その機構を解析したところ、除神経により野生型の遅筋で誘導されるプロテアソーム活性化が、これらのマウスの遅筋では認められないことが分かった。さらに野生型マウスヒラメ筋で観察されるプロテアソーム活性化は、プロテアソームサブユニットの発現上昇によって起こっており、プロテアソームサブユニットの発現に関わる転写因子NFE2L1の核移行の有無に起因していることが分かった。NFE2L1を介したプロテアソームサブユニット発現上昇は活性酸素種によって抑制されることから、PMM不能遅筋では異常ミトコンドリアの蓄積が筋萎縮遅延を引き起こしていることが示唆された。これらのことからParkin介在性マイトファジーの破綻による異常ミトコンドリアの蓄積は、除神経の際に誘導されるプロテ アソーム活性化の抑制を引き起こし、その結果筋萎縮の寛解が起こると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画は(1)「筋萎縮過程ではどのようにしてミトコンドリアの質の低下が起こるのか?」また(2)「質の低 下したミトコンドリア が蓄積すると何故筋萎縮が起こらないのか?」という二つの関連した問題の解明を目的としている。(2)の内容に関してH24年度、H25年度の研究成果を原著論文(Furuya, N., et al. Autophagy 10:50-60 (2014))として発表した。また(1)に関しても現在解析を行っており、最終年度において何らかの成果として発表できると考えている。
前述のように本研究課題は(1)「筋萎縮過程ではどのようにしてミトコンドリアの質の低下が起こるのか?」また(2)「質の低 下したミトコンドリア が蓄積すると何故筋萎縮が起こらないのか?」という二つの関連した問題を明らかとすることを目的としている。H26年度においては、(1)の内容に重点をおいて解析を行い、筋萎縮過程でのミトコンドリアの質の低下メカニズム解明を目指す。具体的にはオートファジー不能マウスと野生型マウスの萎縮ヒラメ筋からミトコンドリアを単離し、質量分析、生化学的解析によりその差異を明らかにする。また、差の見られた因子に関連する遺伝子の発現レベルを解析し、分子レベルでのミトコンドリア品質低下メカニズムを解明する。
本年度は概ね計画通りの支出額となったが、国際学会に参加した際の旅費などが為替レートの関係で一部予定通りとは行かなかったため。実験計画は上記のように概ね順調に進んでいるため、本年度は当初の予定通りの計画で使用する。なお繰越金に関しては消耗品費に加えて使用することとする。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Autophagy
巻: 10 ページ: 50-60
PLOS ONE
巻: in press ページ: in press
PLoS One
巻: 8 ページ: e64605
10.1371/journal.pone.0064605