研究課題/領域番号 |
24500874
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
内藤 通孝 椙山女学園大学, 生活科学部, 教授 (10198012)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / メタボリックシンドローム / 食後脂質異常症 / トリグリセライド / ショ糖 / ブドウ糖 / アポリポタンパク質B48 / レムナント |
研究概要 |
果糖は安価で効率の良い甘味料として使用が普及しているが、一方では、脂質異常症、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなど、健康に対する悪影響が懸念されている。現代の日常生活では、真の空腹状態は1日のうちの2-3時間に過ぎず、1日の大半は「食後」の状態にあると言える。食後における糖・脂質代謝異常は、空腹時における値よりも心血管疾患のリスクファクターとして重要であることが明らかにされている。 本研究では、まず、予備的段階として健常若年女性ボランティアを用いて、果糖の摂取量を下痢等の腹部症状が出ない範囲で設定した。吸収障害の判定は自覚症状のほか、呼気ガス中の水素濃度を測定することによって判定した。その結果、25g(濃度10%)程度の果糖の摂取は明らかな腹部症状や吸収障害をきたさないことを示した。 続いて、糖・脂質代謝に対する果糖摂取の影響を健常若年女性を用いて検討した。本年度は①果糖、②ブドウ糖、③果糖・ブドウ糖混合物、④ショ糖の計4回の摂取試験を行い、果糖を単独で摂取した場合とブドウ糖を単独で摂取した場合の糖・脂質代謝を検討するとともに、果糖とブドウ糖を同量混合して摂取した場合とショ糖の形態で摂取した場合とを比較検討した。血清トリグリセライド(TG)、レムナント中のTG、内因性TGリッチリポタンパク質中のTGは、本試験では脂肪を摂取していないにも関わらず、いずれも上昇し、とくに①で値が高くなった。このことから、肝臓に取り込まれた果糖がTGの合成、あるいは内因性リポタンパクの合成・分泌を刺激した可能性が推察される。また、アポリポタンパク質B-48の一過性上昇が、とくに②でみられた。一方、①では遅れて上昇がみられ、合成・分泌が遅延していると推定された。③と④では、全ての測定項目で①と②の中間の値となり、③と④の間では有意差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画は概ね達成できた。 健常若年女性ボランティアに果糖を摂取させ、呼気ガス中の水素濃度を測定することにより、吸収障害や腹部症状をきたさない果糖摂取の上限量を設定できた。 また、同じく健常若年女性のボランティアを用いて、果糖摂取が糖・脂質代謝に及ぼす影響を検討した。糖質のみ、とくに果糖の摂取で、脂肪は摂取していないにも関わらず、内因性リポタンパク質中のトリグリセライド濃度が上昇するという予想外の結果が得られ、糖質、とくに果糖が食後の脂質代謝に重要な影響をきたす可能性が高いことが明らかになった。これらは次年度の研究計画の策定にとって、重要な知見となる。 また、これらの成果は学会で発表するとともに、英文原著論文として公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、主として果糖摂取の糖・脂質代謝に対する影響を検討する。平成24年度の研究結果を基礎として、果糖、ブドウ糖、ショ糖と脂肪(脂肪負荷試験用脂肪クリーム)を同時に摂取した場合の互いの影響、とくにこれらの糖が脂質代謝に及ぼす影響を検討する。そのために、①脂肪クリーム、②脂肪クリーム+果糖、③脂肪クリーム+ブドウ糖、④脂肪クリーム+果糖+ブドウ糖の計4回の試験を交差試験法で実施し、比較検討する。測定項目は平成24年度の結果を参考とし、適宜追加・削除を行う。 これらの結果をもとに、ソフトドリンクなどからの果糖や、ハンバーガーなどのファストフードの過剰摂取にともなう健康障害、とくに生活習慣病予防のための食生活と運動の面から学会や栄養士会等を通じて、積極的に情報を公表する。また、研究代表者がセンター長を務める椙山女学園食育推進センターが開催する講演会やシンポジウムを通じて地域社会に広く成果を発信して行く。最終的な成果は英文原著論文として公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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