研究課題
基盤研究(C)
運動後、マクロファージの損傷筋局所へのすみやかな移動(走化)は、再構築を急ぐ骨格筋にとって必要不可欠と考えられる。しかし、近年、肥満患者は運動後の骨格筋修復の遅延とともに、浸潤マクロファージ数の減少が報告されている。本年度我々は、マクロファージの走化性の可視化を試み、この手法を用いて損傷筋への走化性におよぼすマクロファージ分化の影響を検討にすることとした。実験には、マウス骨格筋細胞株C2C12細胞、およびマウスマクロファージ細胞株J774細胞を使用した。 J774細胞のM1(炎症型)マクロファージへの分化誘導には、リポポリサッカライド (LPS) 100 ng/mlを用いた。マクロファージマーカーはF4/80とし、M1マーカーにはToll-like receptor (TLR)4 とCD11cを用いた。マクロファージの走化性は、細胞走化性測定装置TAXIScanで評価した。測定条件は、HEPES を含むDMEM培地(10% FCS添加)を使用し、温度37℃であった。LPS刺激は、F4/80発現には影響せず、TLR4およびCD11cの強発現が誘導され、M1型マクロファージへの分化誘導が成立した。ネクロ―シス細胞化した骨格筋損傷モデルを正常C2C12細胞に加えた結果、無刺激J774細胞の損傷細胞への顕著な走化性が観察された。しかし、M1マクロファージの走化性はほぼ完全に消失していた。本研究の結果は、肥満患者では運動後の骨格筋修復が遅延し、同時に浸潤マクロファージ数の減少が生じるとのこれまでの研究報告を支持する結果が得られたものと考える。
2: おおむね順調に進展している
本年度予定していた実験計画は、順調に進み、現在までに、ほぼ仮説していた研究成果を得ることができている。また、解析方法の確立もほぼ達成できたことから、その結果を国際誌へ投稿し、論文掲載が決定している。初年度としては、おおむね順調に進展しているものと思われる。
メタボリックシンドロームの原因の1つである「運動不足」を解消することは、重要課題であるが、実践できない国民も多い。運動免疫学の立場から、本研究では、近年、肥満がもたらす慢性炎症性疾患の原因であるマクロファージ表現型M1型の増加が「運動不足」を引き起こす重要な要因である、と仮説し、その妥当性を今後も検証する。予定している研究計画にしたがって、損傷筋組織でのM1マクロファージ増加機序、およびマクロファージ走化性のメカニズム解明に取り組む。動物実験レベルでの検討が予定されている。さらに、初年度の研究成果を国際学会等で発表するなどして、積極的な研究成果の社会還元と、研究課題の問題点の洗い出しを実施し、仮説の修正、研究計画の見直しなども適宜実施していく。
該当なし
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件)
J. Immunol. Methods
巻: 393 ページ: 61-69
10.1016/j.jim.2013.04.007.
J. Physical Fitness Sports Med.
巻: 1 ページ: 654-653