心疾患の危険因子である高トリグリセリド(TG)血症の原因を網羅的に解析できるシステム構築を目的とする。血清TG分解の主酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)蛋白が低値の場合、高TGの原因となる。その成因としては、LPL遺伝子異常があり、日本人でのLPL遺伝子変異を集積してきた。しかし、LPL蛋白低値でも、LPL遺伝子に変異がない場合もある。LPL蛋白低値の成因をLPL遺伝子変異やその他関連遺伝子変異、そして、非遺伝子変異因子に関して検討した。 LPL遺伝子変異に関しては、高TG者(1歳女児)において、LPL遺伝子変異(エキソン5の1塩基欠失)ヘテロ接合体が同定された。 LPL遺伝子以外の遺伝子変異として、LPL低値であるがLPL遺伝子は正常の高TG血症者2名で、LPL蛋白を合成場から作用場へ移行する蛋白GPIHBP1の遺伝子に関して、エキソン1にT→Gの非同義変異が見いだされた。しかし、この変異はLPL蛋白値正常の正脂者13名中、T/G 7名、G/G 6名あり、機能に影響ない多型と考えられた。 非遺伝子変異因子に関しては、自己免疫疾患の全身性エリテマトーデスで、重度の高TG血症であるが、LPL遺伝子には変異が見いだされない患者の解析を行なった。ウエスタン法では、LPLに対する自己抗体等病因となるLPL阻害物資の有無の判定はできないことを明らかにしていたので、LPL活性阻害の測定が重要であるため、簡便で多検体処理可能なLPL活性阻害の測定系開発を目指した。活性のあるLPL蛋白として、サル腎臓由来株化細胞COS1で組換えLPL蛋白を得ることを試みた。細胞からヘパリンで遊離される画分が最も比活性が高いことがわかった。一般的LPL活性測定は、放射性TGを基質にしているが、より簡便化のため、蛍光基質でのLPL活性測定系構築を行った。精製LPL及び、ヘパリン静注後血漿中のLPLについて、酵素量、反応時間依存的蛍光強度が得られた。以上により、簡便で多検体測定可能なLPL活性阻害の測定系が構築できた。
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